『さらってよ』裏話

初めて好きになった先輩・平尾を相手に、ずるずると都合のいい恋人を演じていた三木。平気なふりをしながらも平尾の身勝手さにひっそりと傷ついている三木の心の慰めになっているのが、仕事先で知り合った年上で穏やかな有元だ。初めに自棄で有元に関係を迫って失敗して以来、有元は困った顔をしつつも三木を拒まない。そんな付き合いが心地よかったのに、突然有元に抱きしめられ……? ずるくて切ない大人の恋。
イラスト:麻々原絵里依

商業誌では滅多にないんですが、お話よりタイトルが先にできたやつです。滅多にっていうか初めてかも。
同人誌だと、結構タイトルとか、台詞からできてくる話はあるんですが、商業誌だとほんと珍しい。
何で珍しいかっていえば、わたしが思いつくタイトルって商業だと使い物にならないのが多くて(同人誌のタイトル見ればわかると思いますが)、「最初からこれに決めてました」っていうのは九割方自主的にボツになり、あと商業誌の話は商業誌用にうんうん唸りつついちから考えるので、「タイトルや台詞からポコッと生まれた話」は使わない/使えないためでした。
この辺でよく、わたしの書く話は「同人誌と商業誌で違う」って言われるんだなと思う。趣味とお仕事では、話の作り方が根本的に違うのです。最近そうでもねーけど。
どっちも「こっちのが好き」って言ってくれる人がいるので、このまんまでもいいのかもなと思いつつ、どっちが書きやすいかとかどっちが楽しいかとかどっちのできがどうなのかとかいろいろ考え、

こんな話はどうでもいいか。

ええとそういうわけで、これはタイトルからというか台詞から生まれた話です。
三木が「さらってよ」って言うので「何がだよ」と思って考えたら、こういうお話になりました。

出てくる三人が三人とも、人間的にちょっとどうか、という感じなので、まあわたしが書くと発露の仕方はどうあれ根本的にそんな人ばっかなんですが、でも今回は出てくる人の年齢が高い分若気の至りで誤魔化せないので、なるべく読んでる人がイヤんならないような方向性にしなくてはと思っていた。ような気がする。成功したかどうかは置いといて。
相変わらず大人になりきれない人たちばっか書いててすみません。
びくびくしながら書いたので、雑誌掲載時にハガキでご感想いっぱい(当社比)いただけて、すごくすごく嬉しかったです。どうもありがとうございます。
あとブログでねだったせいか、文庫発売後もご感想いろいろいただけて、何というしあわせなことであろうかと、思い出しては今もじんわり来るくらい嬉しいのでした。ありがとうありがとう。

書き下ろしは、ほんとは、三木と幸子が仲よくなって、三人で同居するまでのお話にしようかと思ったんですが、ページが全然足りない上にBLってよりホームドラマになりそうなのでやめた。
幸子は高校生のうちの二年間くらいを、有元と三木と一緒に暮らすんじゃないかなと思います。その後も何かと遊びにきたり。
あとがきにも書きましたが、幸子は三木のことを「だめな弟」として見ている。女の子の目から見ると三木は不安そうで所在なげでだらしない子供なんだと思います。本人は「平尾がいなければ俺だって結婚できたのに」とか思ってましたがそもそも無理なんです。モテないんです。
そして幸子の結婚式で、三木はビデオを回しながら泣いて、有元に「まあまあ」と宥められて「拓馬さんは、か、悲しくないんですか、幸子をあんな男に取られて!?」って取り乱したりする予定です。
「ママ、どうしてうちにはおじいちゃんが三人いるの?」
「大きくなったらわかるよ」
みたいな会話もいつか。
有元と三木は、末永く、将来的には縁側でお茶を啜り、ウグイスの鳴き声を微笑み合いながら聞くような夫婦になるといいよねと思います。

平尾に関しては言いたいことが山ほどあるので、隙があったら同人誌でやりたいですね、と思っています。
展開についてはさらなる非難GO!GO!が今から予測されるので来るべき未来について今から謝っておく。ごめんヌ。

楽屋裏,仕事雑記

Posted by eleki