何だこりゃ

わたしは高校生くらいの外国の女の子で、両親は化粧品や服のブランドを扱う商売人です。

大きなデパートを建て、その規模たるや「このデパートができたせいでアジアは変わったよ」と町の老人に言われるほどです。
両親は昔貧乏だったのが、商売で当たって急にお金持ちになり、忙しくて、わたしに構う暇もありません。

金持ちになったので、それまで公立の学校に行っていたわたしは、私立の金持ち学校に行くことになりました。
学校では元貧乏で成金の娘としてすっかり浮いていましたが、美形の双子の兄弟だけは仲よくしてくれました。←サイファとシヴァだった。

ふたりはわたしがそれなりのお嬢さんに見えるようにあれこれアドバイスをしてくれたり、周りとなじめるように心を砕いてくれて、わたしは次第に生活が楽しくなってきました。

ただ両親の仲がうまくいかず、家の中で居場所がなくなってしまいます。
父はファッションの才能に恵まれ、母はそれに劣る自分が許せないらしく、父のアドバイスも聞かず闇雲に働いています。
父は天才肌なのでそんな母にどう接すればいいのかわからず、母は父の才能に嫉妬する自分が許せないようでした。

お互い愛情はあるのに次第にすれ違ってしまうふたりの様子に、わたしはひそかに心を痛めていました。

自分のことで手一杯な両親はわたしに構ってくれず、しかし両親のおかげでいい暮らしをできているのだと自分に言い聞かせ、わたしは寂しさを押し殺していました。
そんなわたしの心に気づいてくれた双子たち(サイファとシヴァ)が、両親に「もっと娘のことを考えろ」と直談判しました。

両親はわたしの寂しさに気づき、反省して、仕事のことは忘れてみんなで旅行に行こうと提案してくれました。
わたしは大喜びで、旅行のための支度を始めました。
父は「この赤い靴下を履いて行きなさい」とわたしのためにそれをプレゼントしてくれました。

しかし旅行の当日、どうしても靴下は片方しか見つかりません。
せっかく父がくれたのだから、それを履いて行きたい、出発の時間が迫って焦るわたしのところに、とんでもない知らせが入りました。

両親の会社が不渡りを出して、会社も家もすべてが差し押さえられてしまうというのです。
赤い靴下を片方履いたままのわたしの部屋に、たくさんの人たちが押し入って、何もかも持って行ってしまいます。

わたしはとにかく、赤い靴下だけは手放したくないと泣きながら部屋中を探すのですが、やっぱりどうしても片方が見つかりません。

「靴下だけは持って持って行かないで、お父さんがくれたのに!」

叫ぶ声には誰も答えてくれませんでした。


泣きながら目が覚めた。

疲れてんのかな、わたし…。

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