秘密-4

 嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三…

秘密-3

 嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三…

秘密-2

 反省室に泊まると言った嘉彦は、当然のように昼過ぎになっても部屋には戻って来ずに、昼食を終えて食堂から帰ってくる途中、真実は寮監のひとりに呼び止められた。「相…

秘密-1

 学習机に向かって課題のテキストを開いていると、背後でドアの開く音がした。「おかえり」 振り返って見ると、部屋に入ってくる同室者の姿。 声をかけた真実に、同室…

秘密-イントロダクション

 会いに行く、と短い手紙が来たのは夏の始まり頃。 懐かしい文字が、差出人不明の手紙として渡された紙の上に見えて、途端に涙が止まらなくなる。 たわいもないダイレ…

トラブルメイクでろくでなし1話-2

 矢野和志が伊勢千暁と同居――同棲を始めてから、かれこれ三ヵ月ほどが経った。 寧子が伊勢のことを好きだという「誤解」も解けて、伊勢とつき合うことになった時、さ…

トラブルメイクでろくでなし1話-1

 街中が赤だの緑だの金色だので飾られて、きらきらし始めると、やたら気分が盛り上がるのは小さな頃からの癖だ。 ただし、その気分と同等の幸福が和志の許に訪れること…

狼は闇夜に潜む・その後

「ケイ、この本読み終わった!」「うっ」 どすん、と元気よく背中に体当たりされて、廊下の雑巾がけをしていた広瀬は危うく顔から木製の床に倒れ込みそうになった。 ど…

朝のひみつ

「おい、起きろ」 頭をひっぱたかれて目が覚めた。「痛ぇ……なに……」 叩かれた後頭部をさすりさすり、うつぶせになっていた体を少しだけベッドから起こす。見上げる…

error: Content is protected