それからの、それから

 うっすらと、何か歌声を聞いた気がして、爾志はぼんやりと瞼を開いた。 真っ先に明るい光が見えた。 カーテンが開いていて、ベランダに続く窓ガラスが見える。 その…

トラブルメイクでろくでなし-あとがき

 割と最近、本編というか「ロマンチストなろくでなし(新書館ディアプラス文庫)」が電子書籍かしたのもあって、完売して久しい商業誌番外同人誌からこのお話をデータ化…

トラブルメイクでろくでなし4話-2<完結>

 目が覚めた瞬間、体中にものすごい違和感と疲労感と軋むような痛みを感じて、和志は思わず呻き声を上げた。「うー……」 瞼を開こうとしたのに、うまくいかない。和志…

トラブルメイクでろくでなし4話-1

 気づいた時には、寝室のベッドで寝ていた。 うっすらと記憶がある。あの部屋から伊勢が連れ出してくれて、タクシーでマンションに戻ってきた。 自分はずっと伊勢に謝…

トラブルメイクでろくでなし3話-1

 何度携帯に電話をかけても、『電源が切られているか、電波の届かないところに――』というアナウンスが繰り返されるばかりだった。 和志が突然、『友人の家に泊まる』…

トラブルメイクでろくでなし2話-2

「だからさー、いい加減メシ喰えって、なあ」 肩を少し乱暴に揺さぶられて、和志はぼんやりしたまま、膝に伏せていた顔を上げた。 心配そうな友人に、顔を覗き込まれて…

トラブルメイクでろくでなし2話-1

 休憩時間や仕事帰りに店を回ったり、カタログを眺めたりしながら過ごしていくうち、着々とクリスマスイブが近づいてきた。 イブまであと二日と迫った十二月二十二日、…

トラブルメイクでろくでなし1話-3

 伊勢へのプレゼントを選ぶために、和志は翌日の仕事帰りに店近くのデパートへ寄った。 あれこれ見て回ったものの、これというものも思いつかず、結局夕飯と夜食の材料…

秘密-6<完結>

 昼過ぎに起きると部屋の中に裕司の姿はなくて、嘉彦の荷物もすべてが片づいていた。池内のベッドも空だ。「……はは」 眩しい光が射し込む窓を見遣って、真実は泣き顔…

秘密-5

 あの夜から一週間もしないうちに、嘉彦の転校と退寮の手続きは整ったようだ。「来週、出てくんだ」 もとから荷物の少ない嘉彦の机やロッカーの周りは、もうちりひとつ…

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