こころなんてしりもしないで・第8話

 九月に入ると、佐山は三日間だけ夏休みを取った。御幸は土日と有給を利用してもっと長い休みを取るよう主張したが、仕事が詰まっていることを理由に、佐山は結局短い休…

こころなんてしりもしないで・第7話

(痛い) 鈍痛で目が覚めた。 ずきずきと、脈打つようにこめかみの辺りが痛んでいる。胃が重たくて、気持ち悪い。喉から胃液が逆流してきそうだ。 こんな感触には覚え…

こころなんてしりもしないで・第6話

 自分が佐山を誘い続けている限り、沙和子に言い寄るチャンスはない。 そう理由づけて、秋口は翌日も佐山に声をかけた。「ごめん、今日は残業してかないと」 昼休みに…

こころなんてしりもしないで・第5話

 土曜日、日曜日と、いつもより楽な気分で過ごすことができた。月曜日になればまた秋口の姿を見ることができると思ったら、少し倖せな気分になる。 金曜のトラブルのこ…

こころなんてしりもしないで・第4話

「秋口、佐山との仕事、どうだ?」 自分の机で書類を書いていたら、青木がやってきてそう声を掛けてきた。「どうって、まあ、特に滞りもなくって感じですかね」 手を止…

こころなんてしりもしないで・第3話

 たしかに秋口と組んで仕事をすることにはなったが、前任の青木とかなりの部分まで作業を終えていたたため、佐山が秋口と頻繁に打ち合わせなどで顔を合わせる必要はなか…

こころなんてしりもしないで・第2話

 総務部の雛川沙和子と言えば、同じ女子社員からすら憧れの眼差しで見られるマドンナだった。 今どきマドンナなどというふたつ名を誰もが平然と口にするくらい、彼女は…

こころなんてしりもしないで・第1話

恋心というものは、どうやら意識なんてしてもしなくても勝手に芽生えてしまうものらしい。 たとえそれが同性、これまで恋愛対象に入るなんて思ってもみなかった『男』だ…

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