人気小説家の姉、寧子の新しい担当編集・伊勢は仕事のできる男前。寧子はすっかり夢中だが、和志は伊勢が苦手だった。美容師業の傍ら寧子の世話をする和志は実のところ、寧子の描く恋愛小説のヒロイン・ユイコのモデルであり、ろくでもない男の好きなゲイ。誠実そうな伊勢は好みではない。だが街で偶然出逢った伊勢は、人が悪くて強引で、しかもユイコに惚れていて……!?
イラスト:夏乃あゆみ
トラブルメイクでろくでなし※R18
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街中が赤だの緑だの金色だので飾られて、きらきらし始めると、やたら気分が盛り上がるのは小さな頃からの癖だ。 ただし、その気分と同等の幸福が和志の許に訪れるこ …
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矢野和志が伊勢千暁と同居――同棲を始めてから、かれこれ三ヵ月ほどが経った。 寧子が伊勢のことを好きだという「誤解」も解けて、伊勢とつき合うことになった時、 …
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伊勢へのプレゼントを選ぶために、和志は翌日の仕事帰りに店近くのデパートへ寄った。 あれこれ見て回ったものの、これというものも思いつかず、結局夕飯と夜食の材 …
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休憩時間や仕事帰りに店を回ったり、カタログを眺めたりしながら過ごしていくうち、着々とクリスマスイブが近づいてきた。 イブまであと二日と迫った十二月二十二日 …
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「だからさー、いい加減メシ喰えって、なあ」 肩を少し乱暴に揺さぶられて、和志はぼんやりしたまま、膝に伏せていた顔を上げた。 心配そうな友人に、顔を覗き込まれ …
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何度携帯に電話をかけても、『電源が切られているか、電波の届かないところに――』というアナウンスが繰り返されるばかりだった。 和志が突然、『友人の家に泊まる …
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眠くて、自分がいったいどこにいるのか、どんな格好をしているのか、よくわからなかった。 視界がぼんやりと霞みがかっている。体も頭も重たく、思考が空転する。( …
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寧子が記録していた池袋の住所に、松島雅春という男はもう住んでいなかった。「大家さんに追い出されたのよ。何だかいっつもガラの悪そうな人たちが出入りしてるし、 …
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気づいた時には、寝室のベッドで寝ていた。 うっすらと記憶がある。あの部屋から伊勢が連れ出してくれて、タクシーでマンションに戻ってきた。 自分はずっと伊勢に …
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目が覚めた瞬間、体中にものすごい違和感と疲労感と軋むような痛みを感じて、和志は思わず呻き声を上げた。「うー……」 瞼を開こうとしたのに、うまくいかない。和 …
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割と最近、本編というか「ロマンチストなろくでなし(新書館ディアプラス文庫)」が電子書籍かしたのもあって、完売して久しい商業誌番外同人誌からこのお話をデータ …