秘密-6<完結>
昼過ぎに起きると部屋の中に裕司の姿はなくて、嘉彦の荷物もすべてが片づいていた。池内のベッドも空だ。「……はは」 眩しい光が射し込む窓を見遣って、真実は泣き顔…
昼過ぎに起きると部屋の中に裕司の姿はなくて、嘉彦の荷物もすべてが片づいていた。池内のベッドも空だ。「……はは」 眩しい光が射し込む窓を見遣って、真実は泣き顔…
あの夜から一週間もしないうちに、嘉彦の転校と退寮の手続きは整ったようだ。「来週、出てくんだ」 もとから荷物の少ない嘉彦の机やロッカーの周りは、もうちりひとつ…
嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三…
嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三…
反省室に泊まると言った嘉彦は、当然のように昼過ぎになっても部屋には戻って来ずに、昼食を終えて食堂から帰ってくる途中、真実は寮監のひとりに呼び止められた。「相…
学習机に向かって課題のテキストを開いていると、背後でドアの開く音がした。「おかえり」 振り返って見ると、部屋に入ってくる同室者の姿。 声をかけた真実に、同室…
会いに行く、と短い手紙が来たのは夏の始まり頃。 懐かしい文字が、差出人不明の手紙として渡された紙の上に見えて、途端に涙が止まらなくなる。 たわいもないダイレ…
矢野和志が伊勢千暁と同居――同棲を始めてから、かれこれ三ヵ月ほどが経った。 寧子が伊勢のことを好きだという「誤解」も解けて、伊勢とつき合うことになった時、さ…
街中が赤だの緑だの金色だので飾られて、きらきらし始めると、やたら気分が盛り上がるのは小さな頃からの癖だ。 ただし、その気分と同等の幸福が和志の許に訪れること…
「ケイ、この本読み終わった!」「うっ」 どすん、と元気よく背中に体当たりされて、廊下の雑巾がけをしていた広瀬は危うく顔から木製の床に倒れ込みそうになった。 ど…