君はきれいな(悪)夢のよう

読み切り

 寿賀(すが)翔鷹(しょうよう)なんて無駄に画数の多い名前をそらで書けるようになってしまった。 高校の同級生。クラスが違ったから一年の時は名前も知らなかったし顔も見たことがなかった。 二年生になった…

と、おまけ。/それはさすがにどうなのか

こころなんてしりもしないで・番外編

「と、おまけ。」同人誌版の書き下ろしだった短篇です。「きまずいふたり」の後のお話になります。 「それはさすがにどうなのか」バレンタインデーの佐山と秋口の話。以前サイトで公開していたものです。今回は多…

突発あけぼの探険隊-第三種接近遭遇

突発あけぼの探険隊

 気づいたら繋いだ手が離れていた。 大晦日、二年参りに行こうと、大好きな従兄と、その両親と一緒に近くの神社へ出向いた。 思った以上に人出が多くて、「絶対に離しちゃ駄目だぞ」と何度も念を押されたのに、…

こころなんてほんとしりもしないで

こころなんてしりもしないで・番外編

「佐山さん、雑煮食べますか」 ベッドの上で、未だ俯せに転がったまま動かない佐山に向けて、とりあえず秋口は声をかけてみた。 元旦、すでに昼下がり。 大晦日から佐山が秋口の家に泊まりに来て、二年参りに行…

きまずいふたり・第5話<完結>

きまずいふたり

「どうしてそんな態度なんだか理解不能なんですよ」 横でぶつぶつと呟いている低い声に、御幸はもう相槌を打つ気も起きなくなっていた。「あの人何であんなに頑固なんだ、もうちょっとぼやーっとしてると思ったの…

きまずいふたり・第4話

きまずいふたり

 唖然、という表現がもっともぴったりだっただろう。 佐山も、御幸も、そして秋口も、目と、すぐには言葉の出ない口を開いている。「あれ、どうかしました?」 唯一、縞の声だけが脳天気に響いていた。「あの……

きまずいふたり・第3話

きまずいふたり

 エレベーターでばったり秋口と乗り合わせた。「あ」 先に秋口が乗っていたところに、佐山が後から乗り込む形だ。タイミングがいいのか悪いのか、他に乗客はいない。多分悪い方だ、と思いながら佐山はエレベータ…

きまずいふたり・第2話

きまずいふたり

(そうだ、金下ろさないと) 忙しさにかまけていたら、財布の中身がすっかり寂しくなっていた。 珍しく、奇蹟的に定時に仕事を終えて会社を出た平日の夕方、佐山は自宅に戻る前に途中の駅で電車を降り、銀行に向…

きまずいふたり・第1話

きまずいふたり

 七時に仕事が終わりますとメールが来たので、しばらくの間迷った挙句、やっと『了解』と短い返事を送り返す。 送信完了の表示を確認してから、佐山は携帯電話を折りたたむとデスクの上に置いた。今日も仕事は山…

こころなんてしりもしないで・第10話<完結>

こころなんてしりもしないで

 気持ちが落ち着くまで秋口と話すのをやめておこうと思ったら、一週間彼を無視しつづける羽目になった。 多分、話し合う状態じゃない。自分も秋口も。まともに話そうとすれば、自分は秋口を許してしまうだろうと…

こころなんてしりもしないで・第9話

こころなんてしりもしないで

 秋口が会社や外の女の子と会っている様子は、佐山にもすぐわかった。 もちろん秋口本人が佐山に宣言するわけではないけれど、もともと社内でも噂話の種にされることの多い彼のことだ。休憩所や食堂での女子社員…

こころなんてしりもしないで・第8話

こころなんてしりもしないで

 九月に入ると、佐山は三日間だけ夏休みを取った。御幸は土日と有給を利用してもっと長い休みを取るよう主張したが、仕事が詰まっていることを理由に、佐山は結局短い休みだけを手に入れた。 暦の上ではもう秋と…

こころなんてしりもしないで・第7話

こころなんてしりもしないで

(痛い) 鈍痛で目が覚めた。 ずきずきと、脈打つようにこめかみの辺りが痛んでいる。胃が重たくて、気持ち悪い。喉から胃液が逆流してきそうだ。 こんな感触には覚えがある。営業時代によく味わった、紛れもな…

こころなんてしりもしないで・第6話

こころなんてしりもしないで

 自分が佐山を誘い続けている限り、沙和子に言い寄るチャンスはない。 そう理由づけて、秋口は翌日も佐山に声をかけた。「ごめん、今日は残業してかないと」 昼休みに食堂で見かけた時に「帰りにまたどこかへ寄…

こころなんてしりもしないで・第5話

こころなんてしりもしないで

 土曜日、日曜日と、いつもより楽な気分で過ごすことができた。月曜日になればまた秋口の姿を見ることができると思ったら、少し倖せな気分になる。 金曜のトラブルのことを思い返せば、あっという間に暗い気分に…

こころなんてしりもしないで・第4話

こころなんてしりもしないで

「秋口、佐山との仕事、どうだ?」 自分の机で書類を書いていたら、青木がやってきてそう声を掛けてきた。「どうって、まあ、特に滞りもなくって感じですかね」 手を止め、青木を見上げて秋口は答えた。 青木は…

こころなんてしりもしないで・第3話

こころなんてしりもしないで

 たしかに秋口と組んで仕事をすることにはなったが、前任の青木とかなりの部分まで作業を終えていたたため、佐山が秋口と頻繁に打ち合わせなどで顔を合わせる必要はなかった。商品の設計に入る前ならもちろん仕様…

こころなんてしりもしないで・第2話

こころなんてしりもしないで

 総務部の雛川沙和子と言えば、同じ女子社員からすら憧れの眼差しで見られるマドンナだった。 今どきマドンナなどというふたつ名を誰もが平然と口にするくらい、彼女は本当に美人で上品で、大人の女の色香を漂わ…

こころなんてしりもしないで・第1話

こころなんてしりもしないで

恋心というものは、どうやら意識なんてしてもしなくても勝手に芽生えてしまうものらしい。 たとえそれが同性、これまで恋愛対象に入るなんて思ってもみなかった『男』だとしても。 たまたま相手が自分と同じ男だ…

こころなんてしりもしないで・目次

こころなんてしりもしないでシリーズ

こころなんてしりもしないでシリーズ あらすじ 性格の悪いサラリーマン(俺さま24歳)×普通のサラリーマン(地味メガネ腕カバー27歳)の恋。※R18 1.こころなんてしりもしないで 会社で女子社員に人…