それからの、それから
サイト上で読めるcodoc版は以下(メンバーはプラン内で閲覧可能) それからの、それから うっすらと、何か歌声を聞いた気がして、爾志はぼんやりと瞼を開いた。 真っ先に明るい光が見えた。 カーテンが…
サイト上で読めるcodoc版は以下(メンバーはプラン内で閲覧可能) それからの、それから うっすらと、何か歌声を聞いた気がして、爾志はぼんやりと瞼を開いた。 真っ先に明るい光が見えた。 カーテンが…
「ケイ、この本読み終わった!」「うっ」どすん、と元気よく背中に体当たりされて、廊下の雑巾がけをしていた広瀬は危うく顔から木製の床に倒れ込みそうになった。どうにか踏み留まれたのは、駆け寄ってぶつかった…
トラブルメイクでろくでなし※R18 PDF版およびEPUB版をBOOTHで販売中。メンバーは以下のページで全話閲覧可能です。
割と最近、本編というか「ロマンチストなろくでなし(新書館ディアプラス文庫)」が電子書籍かしたのもあって、完売して久しい商業誌番外同人誌からこのお話をデータ化してみました。 何もかも懐かしい。電書版…
目が覚めた瞬間、体中にものすごい違和感と疲労感と軋むような痛みを感じて、和志は思わず呻き声を上げた。「うー……」 瞼を開こうとしたのに、うまくいかない。和志は片手で目許に触れてぎょっとした。 目の…
気づいた時には、寝室のベッドで寝ていた。 うっすらと記憶がある。あの部屋から伊勢が連れ出してくれて、タクシーでマンションに戻ってきた。 自分はずっと伊勢に謝り続けて、大丈夫だからと伊勢が応え続けて…
寧子が記録していた池袋の住所に、松島雅春という男はもう住んでいなかった。「大家さんに追い出されたのよ。何だかいっつもガラの悪そうな人たちが出入りしてるし、夜中中騒いでるし、あたしたちも迷惑してたの…
眠くて、自分がいったいどこにいるのか、どんな格好をしているのか、よくわからなかった。 視界がぼんやりと霞みがかっている。体も頭も重たく、思考が空転する。(気持ち悪い……) 和志は冷たくて居心地悪い…
何度携帯に電話をかけても、『電源が切られているか、電波の届かないところに――』というアナウンスが繰り返されるばかりだった。 和志が突然、『友人の家に泊まる』と伊勢にメールを寄越したのは一昨日の晩の…
「だからさー、いい加減メシ喰えって、なあ」 肩を少し乱暴に揺さぶられて、和志はぼんやりしたまま、膝に伏せていた顔を上げた。 心配そうな友人に、顔を覗き込まれていた。「昨日の昼から何も食べてないんだろ…
休憩時間や仕事帰りに店を回ったり、カタログを眺めたりしながら過ごしていくうち、着々とクリスマスイブが近づいてきた。 イブまであと二日と迫った十二月二十二日、今日は遅番だったので、勤め先を出る頃には…
伊勢へのプレゼントを選ぶために、和志は翌日の仕事帰りに店近くのデパートへ寄った。 あれこれ見て回ったものの、これというものも思いつかず、結局夕飯と夜食の材料だけ購入して家路につく。(鞄とか財布………
昼過ぎに起きると部屋の中に裕司の姿はなくて、嘉彦の荷物もすべてが片づいていた。池内のベッドも空だ。「……はは」 眩しい光が射し込む窓を見遣って、真実は泣き顔で笑った。 いつの間に眠ってしまったのだ…
あの夜から一週間もしないうちに、嘉彦の転校と退寮の手続きは整ったようだ。「来週、出てくんだ」 もとから荷物の少ない嘉彦の机やロッカーの周りは、もうちりひとつないほど片づいていたから、本人に宣言され…
嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三方の壁へ寄せて配置していある。真実の向か…
嘉彦は大丈夫だろうか。 鴫野は出がけにああ言ったが、消灯時間を過ぎても嘉彦はまだ帰って来ず、点呼を済ませて部屋の電気は寮監の手で切られた。 部屋のベッドは三方の壁へ寄せて配置していある。真実の向か…
反省室に泊まると言った嘉彦は、当然のように昼過ぎになっても部屋には戻って来ずに、昼食を終えて食堂から帰ってくる途中、真実は寮監のひとりに呼び止められた。「相沢、鴫野はどこに行った」「知りません、今…
学習机に向かって課題のテキストを開いていると、背後でドアの開く音がした。「おかえり」 振り返って見ると、部屋に入ってくる同室者の姿。 声をかけた真実に、同室者はにこりと笑みを見せて、静かにドアを閉…
会いに行く、と短い手紙が来たのは夏の始まり頃。 懐かしい文字が、差出人不明の手紙として渡された紙の上に見えて、途端に涙が止まらなくなる。 たわいもないダイレクトメールに紛れさせる巧妙なやり方で、手…
矢野和志が伊勢千暁と同居――同棲を始めてから、かれこれ三ヵ月ほどが経った。 寧子が伊勢のことを好きだという「誤解」も解けて、伊勢とつき合うことになった時、さすがに和志も自分がこれ以上寧子のマンショ…
街中が赤だの緑だの金色だので飾られて、きらきらし始めると、やたら気分が盛り上がるのは小さな頃からの癖だ。 ただし、その気分と同等の幸福が和志の許に訪れることなど、ほとんどなかったのだが。(クリスマ…
秘密 リクエストで書いた話。他作品とのコラボ?です。 登場人物 おうちのひみつ(おうちバイバイ)相沢真実…裕司の年子の兄。想いを寄せ合う弟と引き離され、全寮制の高校で生活している。相沢裕司…真実の弟…
寿賀(すが)翔鷹(しょうよう)なんて無駄に画数の多い名前をそらで書けるようになってしまった。 高校の同級生。クラスが違ったから一年の時は名前も知らなかったし顔も見たことがなかった。 二年生になった…
「と、おまけ。」同人誌版の書き下ろしだった短篇です。「きまずいふたり」の後のお話になります。 「それはさすがにどうなのか」バレンタインデーの佐山と秋口の話。以前サイトで公開していたものです。今回は多…