ルームシェアをしているオタク女ふたりが東京で猫を譲り受けることの難しさ【3】
譲渡サイトでサビ姉妹をみつけた続き。
当時の記憶が生々しい頃に書いた文章で、公開するかどうか迷ったのはこの辺のくだりがあるためです。
我ながら感じ悪い表現があちこちありますし、病んどったなと思いますが、その時の正直な気持ちなので、やはり自分メモ的に残しておきます。
前回までの更新で、Twitterとかメールとか直接電話でとか、猫の譲渡についてご意見いただくことがあって、みんないろんな方面でいろいろ大変だなあと思ってます。
繰り返し書きますが、私は、単身者や同棲、ルームシェアをしている里親希望者が譲渡を断られてしまうことについて、そういう規定を作っている愛護団体を非難するつもりはありません。
非難していいのは「猫が未来永劫絶対安全だと確認できる」というシステムを作れたり、作ろうとしている人だけだと思っています。
まだ誰にもそれができないから、猫が傷つく可能性を減らそうとする結果こうなっている、というのは理解しています。
猫が来ないことに対する呪詛が強すぎて非難しているように見えるかもしれませんが、してませんのでよろしくお願いします。
でも他人の飼い猫や地域猫を不法侵入繰り返してまで保護している地元の愛護団体などには、思うところは山ほどあります…今回の話題とは関係ないから言わないけど…いや書いちゃったけど…。
多少なりとも空気を和らげるために世界一かわいいサビの画像を貼っておきます。
前置きが長い。
ここから続き。
何度見ても、2匹とも、サビ猫です。
ちょっとびっくりしました。まさか両方サビが出るとは。
きょうだいのうち1匹がサビっていうパターンが多くて、2匹サビっていうのはすごく珍しい(と、思う)。
実際いるんだから稀少すぎるってことはないんだろうけど、でもまさか、このタイミングで出るとは思わなかった。
しかも写真を見ると、両方ともおそろしいほどの、震えるほどの、宇宙規模の美猫…城どころか地軸が傾き地球の季節が変わってしまう…腰を抜かすかと思った…。
かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいうおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああかわいすぎて地球滅びるどうしよう
今でも何度見てもかわいい。やばい。
譲渡サイトでの説明文を読んでいくと、どうやら、サビ2匹のうち、片方が骨折しているらしい。
貼られていた写真のうち片方の子は、たしかに前肢がおかしな方向に曲がり、ぐったりと目を閉じて横たわっているものばかりでした。
「日常生活に支障はないけれど、曲がった状態で骨がくっついてしまって、走ったり、高いところに飛び乗ったりすることはできません」、という説明。
少しだけ同居人と相談しました。
しかし相談する必要もないくらい、「でもこれは絶対縁だし」と言って、二人とも即決でした。
たとえ介護で時間を取られるようになり今までのような生活が送れなくなるとしても、でもまあ、ケイティの最後の一年が二十年続く程度のものだし。
ケイティも宇宙一かわいいよぉ…。
ここでちょっと気持ち悪い話をしますが、私が飼う動物は、必ず脚が悪いんです。
最初に飼ったセキセイインコの花子(オス)も、最初に飼った犬のエレキも、ハムスターのぱみこも、みんな生まれつき脚が悪かったり、脚を怪我した状態でうちに来ました。
エレキは手術して歩けるようになったけど、最後まで歩き方が変だったな。
…って話を前に式部さんにした時、「実はわたしも、子供の頃、脚が悪かったんだよね」と言い出した時には若干ゾッとした。
とにかく、まあ、気持ち悪い言い方ですが「ああ、これはうちに来る運命だな」と思いました。
気持ち悪いのはわたしの思い込みがです、念のため。
なので申し込む前提で、ひとまず、前肢の状態を詳しく聞いておこうと思って、問い合わせてみる。
たとえどんな状態でも2匹一緒に引き取るつもりで、介護が必要であればその心構えをするため、怪我の程度を把握したかったのです。
問い合わせてから一時間くらいで返信がきて、「走ったりベッドに飛び乗ったりするのは難しいけど、トイレなどは自力でできます」とのこと。
「生活に支障はないと獣医さんが言っています」という文章に、「この書き方だと、生活に支障はないけれど、普通の猫らしく元気に動き回ることはできないのだろう」と推察し、やはり一生の介護の覚悟も決めて、「ぜひ2匹とも譲ってください」と、改めて申し込みをしました。
が、その後、なかなか返事が来ない。
譲渡サイトを使うのが今回で初めてだったので、勝手がわからず、不安になりました。
前回書いたとおり、最初に申し込みかけた募集は譲渡先が数時間で決まり、今回問い合わせの返信も速攻届いたので、「決まる時は即日なんだ」という意識になってしまったのもまずかった。
しかも我々が申し込みをした後にサイトを見たら、「近所の友人にも声をかけているので、そちらで決めることもある」と説明がサイレントで増えており、募集は継続されたまま、どんどん応募者の数字が増えていく。
他の譲渡記事を見れば、申し込みが来た段階で「現在交渉中につき一旦募集を停止します」とタイトルを書き換える人もいる。
ということは、すでに我々は、審査から外れているのではないか?
申し込み時のプロフィール(名前や住所や職業や飼育環境や飼育経験など、かなり細かく記入するところがある)を見た上で、「この人たちは駄目だから、もっといい条件の人が現れるまで募集をかけておこう」「断る口実を作るために、近所の友人にも声をかけたことにしておこう」と思われてしまったのではないか?
と、かなり狼狽しました。
おかしい。
運命の猫のはずなのに。
思い込みが激しいといったらそれまでなんですが、わたしはかなり引きがいい方です。
欲しいものについて、「あ、来るな」と思った時はかならず手に入ります。
サビ姉妹もそうだったので、この展開には、おかしいなあ、もうそういう思い込み能力はなくなってしまったのか…? と首を捻っていました。
最初の問い合わせから十日経っても返答がなく、個人の保護主がいいと教えてくれた編集さんには「中には返事をしない保護主もいる」と聞いて、落ち込む。
やっぱりルームシェアは駄目か。
安定した収入のない人間は駄目か。
交渉の余地もなく、個人の保護主にすらはねられてしまうのか。
でも、駄目なら駄目で、早く返事をくれたらいいのに…。
申し込んでから二週間経っても音沙汰がなく、その間にも、家に猫がいない苦しみが増していく。
わたしも式部さんも、もう、猫がいない生活に耐えられぬ。
ゾンビのように「ケイティ…ケイティ…」とうつろな目で呟きながら部屋を歩き回り、ケイティと同じサイズのオオタチのぬいぐるみを抱き上げては「ケイティ…」とまた名を呼び頭を撫で、毎日ケイティの骨壺も撫でる。突然ものすごい喪失感や虚無感を味わって滂沱する。
などとやっているうちに、本当にもうこれは駄目だ、一刻の猶予もないと、お互い強い危機感を覚えました。
(この話をすると、式部さんは「そんなことない、わたしは平気だった」って言い張ってるから平気だったのかもしれない)
(ということにしておいた方がいいのかもしれない)
そして上記のようなことを書けば、「保健所や保護猫カフェからもらうことも考えてもらえませんか?」「どうか殺処分される猫のことも知ってください」というようなメッセージがポコポコ届く。
こういうのを絶対言われると思って、あらかじめ「念のため、保健所や里親会などについても存じております」ということを書いておいたんですが。
まあ言いたいことを言いたいだけの人の目には入らないわけですよ。下過ぎたかな書いた位置。
ちょっと困ったので、地元の保健所や愛護団体の状況などをTwitterでちらっと呟いてみたら、今度は「なら県境を跨いででも別の保健所に行ってください」みたいな追撃メッセージが来て、さらに困ってしまった。
一律、謎の嘆願調だったのがしんどい。全員「返信不要」だったのもさらにしんどい。
一部の人は、こちらが猫に対して無知で、保護猫や保健所の存在も知らなければそれを救う気もないという、言ってもないことを前提に一方的なメッセージを送ってくる。
返信不要のメッセージについては、大体どんな話題でも「いただいたメッセージはすべてありがたく、嬉しく読んでいます」っていつもは書くし、実際そのとおりなんですが、愛護センターや殺処分云々に関してだけは、何をどう取り繕ってもポジティブな感想が持てないため、感謝はできないです。
ありがたくないし、有り体に言って腹が立ちました。
だってメッセージくれたのは、多分全員、自分自身は保護活動してない人なんだよね。
してたら「うちに猫がいますから紹介しますよ」って言うもんね。具体的な地域を出して「いつ、どこで譲渡会をやりますから、来てください」って言うもんね。
保健所や愛護センターですんなり猫譲ってもらえる地域に住んでたり、環境だったりするんだよね。
きっと今の愛護団体が、地域によってどれだけ厳しいのかは知らないんだよね。
本人は啓蒙活動に励んでるつもりで、いいことしたって思ってるんだよね。
だから「保健所にいけば殺処分されそうな猫が簡単に救えるのにそれをしないなんて怠惰で我儘で傲慢だ」と一方的に断じることができるんだよね。メッセージ送ったっていう満足感以外は何も誰も救われてないけどね。
……オオオオオ!!! オオオオオオ!!!!! オオ…、……!!!!!
と発狂しそうになっているところに、現実に保護ボランティアをしていらっしゃる方から、お声掛けいただきました。
私たちと同じフリーランス(漫画家さん)で、かつケイティが来た頃からご存じの方だから、うちのような環境であっても「審査なしで大丈夫」とおっしゃっていただき、
本当に、本当に、いろんな意味で、救われたのでした…。
という内情はとても相手には言えませんでしたが(頭おかしくなってる自覚はあった)、とにかく激しい鬱状態だったのが正気に返って、だったらもう、そちらにお願いしてしまおうかと、式部さんとの間で話がまとまりました。
その方には以前から「何かあったら声をかけてね」と言ってもらっていたのに、自分から頼れなかったのは、保護活動や里親探しをどんな按配で行っているのかいまいちわからず、「サビのきょうだいで仔猫を探している」という条件をつけてお願いするのは失礼じゃないか、迷惑じゃないかとか悩んで二の足を踏んでいたからです。
他にも保護活動をされている友人知人を数人知っていたんですが、最初は本当にもっとあっさり猫が手に入ると思い込んでいた+地元の猫を迎えたいと考えていたために、まず愛護センター→愛護団体→譲渡サイトと流れていったのだった。
譲渡サイトを眺めたり、動物病院をパトロールしたり、行ける範囲での譲渡会のおしらせを探す傍ら、保護活動をしているフォロワーさんの預かり猫にサビが出たら、即交渉しようと思ってTwitterを見張ってはいました。
(そして仔猫たちを預かる様子、里親が現れて引き取られていく様子を見ては、羨ましく転げ回っていた)
今となっては、最初から保護活動している友達を頼れば話が早かったのにと思うんですが、でもそれは「今になってみればわかること」なんだよなあ。
これも今になっては全然杞憂だったんですが、保護活動が大変そうなのに、変な問い合わせをして煩わせたり、それで嫌われたら嫌だなあなどと思い詰めていた。
いやもうどれだけメンタルやられてたんだよ。預かりボランティアをやっている人は、引き取り手がみつかるのが一番嬉しいに決まってるじゃんね…。
そんなことにも思い至らないレベルには自分の落ち込みでいっぱいいっぱいでした。
「『サビのきょうだいで仔猫を保護することがあったら、連絡がほしい』という図々しい条件をつけても大丈夫ですか」と、とりあえずお話しするだけしてみようと決心する。
希望を伝えておいて、サビ猫が保護されるまで、もう年単位になってもいいから気長に待たせてもらおう。
でもサビ以外で一緒に暮らしたいなって思える仔猫が保護されたら、それはそれで相談させてもらおう。
そういう問い合わせメールを出してみてから、踏ん切りをつけるためにも、譲渡サイトからの応募はこちらから取り下げよう。
ということを、シェアハウス会議で決議した。
ここでかなり思い詰めていたのがスッと楽になって、「よーしそのうち仔猫来るぞー!」と、明るい気持ちになれました。
で、声をかけてくださった漫画家さん宛てに、DMを書いてました。
文面にすごく迷いつつ、やたら時間をかけてやっと書き上げ、あとは送信するだけという状態で、今しも送信ボタンを押そうとしていた時、電話が鳴りました。
出てみると編集さんからで、仕事の話かと思いきや、「渡海さん、猫探してますよね」と。
瞬間的に「運命が来た!」と思い、勢い込んで「はい! サビ猫がいますか!?」と訊ねたんですが、そういうわけではなく、どうやら他の担当作家さんが猫の保護活動をされているので、仲介しましょうかという打診でした。
お話を聞くと、サビ猫は今のところいないようだったので、どのみち保護活動をされている方に頼るなら、直接の知り合いにお願いする方がいいかなと思って、そのお話はお断りしました(ありがとうございました)。
そして、やっぱり現実的に保護活動をしている人や現実的にこっちを慮ってくれる人は、具体的に猫を助ける話をしてくれるんだなあと、改めて思ったりした。
で、ちょっと愚痴がてらそういう猫の話をしてから、電話を切ったんですよ。
そしたらメールが来てたんですよ。
電話してる間に、譲渡サイトから「メッセージが届いてます」っておしらせするメールが。
びっくりしてサイトに飛び、メッセージを確認したら、サイトの保護主さんから「譲渡前提で、一度飼育環境の確認のためにお宅を拝見させてください」と。
譲渡前提で、と。
書いてあったんですよ。
また悲鳴を上げました。悲鳴というか奇声です。式部さんの部屋まで走りました。式部さんも奇声を上げてました。まあ上げるわな!
メッセージには、訪問の具体的な候補日まで書いてありました。
しかしあぶなかった。
電話来なかったら、応募取り消すとこだった。
頭の作りが単純なので、アッ、これか~、これが運命か~、なら来るわ~あのサビたちはうちにやっぱり、と思い、勢い込んで返事を書きました。
もちろん「はい喜んで!」のメールです。うれしすぎて気持ち悪い文章にならないように気をつけました。
長いな!
もうちょっと続きます。
サビが来るよケイティ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!
つづき