知るかバカうどん「君に愛されて痛かった」3巻

新潮社
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待望の三巻。

男たちに襲われたトラウマで不登校になっていた一花が、勇気を振り絞って学校に現れた。そこで目にしたのは、自分がかつていた位置に収まり、笑顔で過ごすかなえ。絶望と屈辱の中、壊れたパワーバランスは新たな犠牲者を生む。一方、寛への想いで幸福感に浸るかなえ。その強すぎる恋慕の情は次第に狂気を帯びてゆく――。

終わりに向かって淡々と積み上げて行く感じの3巻でした。
劇的にしんどい事件は起こらないのにものすごい閉塞感。
かなえがヤバすぎて一花ちゃんが可哀想なんだけど可哀想なところがたまらなくてすみません。

得意な人もそういないと思いますが、承認欲求が激しすぎる人が怖くて苦手です。
承認欲求が強すぎる人は自分をみとめてほしいあまりに他人を巻き込むことが多いから怖い…。
自己肯定が強い人、たとえばどう見たって可愛い子がアイドルをやって「私可愛いでしょ! 見て! 見た方があなただってハッピーでしょ!」みたいにギラギラしたものを振りまいている姿を見るのは大好きです。
「素敵な絵をあなたにも見せてあげる!」ってたくさん発信する絵師さんも愛してやまない。感謝しかない。
苦手なのは、自己評価が低い割にありのままの自分をみとめてもらいたい欲ばかりが強いタイプです。
これを好きな人っていうのもいない気はするが。
劣等感がひどい人間が周囲に存在をみとめてもらうためには他人を貶めるのが一番簡単らしく、特に「自分がなりたかった自分」に対してすさまじい攻撃を始める割に被害者面をするから、見ていてストレスが溜まる。

この漫画の何がすごいって、「かなえが自己評価が低く、自分の居場所を作るために他人を貶め傷つけても平気な女の子である」ということを全然オブラートに包まないところだなと。
卑劣で悲惨な人格なのに、でも寛君に恋するかなえはすごく可愛い。
このまま幸せになって、と祈ってしまう。
生い立ちや家庭環境が不幸だろうと、周囲の人間に心を許せなかろうと、親元を出て地元を離れればがらりと人生が変わる日も来るかもしれない。来ないかもしれないけど希望はあるんだから頑張って。
という祈りがまったくもって無駄なことは、一巻の冒頭ですでに明らかであるあたりに、「何て酷い漫画なんだ…」と悶えるしかない。誰も幸せにしないぞという作者の気概を感じる。
不幸な家庭環境、愛されず満たされないまま生きてきた女の子が、友情と恋人を手に入れていつしか幸せになる話…と錯覚する余地も与えてもらえない。
全員がよりいっそう不幸になって、全員が最終的に何もかも失うというバッドエンドルートしか提示されていない。
何をして、この作品を、作者は描かずにはいられなかったのだろう。

と思ったところでのあとがきですよ。
あとがきの疾走感がすばらしく、本編も最高でしたがあとがきが好きすぎてぐうの音も出なかった。
いろんなものの終わりは見えているんだけど、どういうふうに終わりに向かうのかを見届けたい。
 
ためしにと思ってこのシリーズだけeBookJapanで買ってるんだけど、アプリからだと検索できなくてめんどくさいから普通にhontoで買えばよかったな。買い直すか…。

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