細切れのネタを一本のストーリーとしてまとめるコツ
最近質問箱とかマシュマロ代わりに「PAGEFUL(ペイジフル)」というサービスを使うようになって、何となく、期間限定で『小説を書いたり同人誌を作ったりする上での質問』も募集/回答するようになりました。
※2024年1月現在サービス終了しています
前からこういう内容をちょくちょく書こうと思っていて、noteにもマガジンを作っていた(まだ一本しか記事がない…)ので、こちらにも転載。
ペイジフル便利なんだけどアーカイブ的に利用するにはちょっと弱いので、小説を書くこと関連の記事はこちらに移していきます。
プロになるためによりよい投稿作を書きたい、というと少し話が違ってきてしまうので、あくまで「楽しく小説を書くには」という部分を、「私はこうやっています」という参考程度でご覧いただけますと幸いです。
いただいたご質問
小説を書きたいのですが、細切れのネタ(妄想)は出てくるもののストーリーが上手くまとまりません。渡海先生の「1本のストーリーとしてまとめるコツ」があったりしたら、教えていただきたいです。
以下回答
私は細切れのネタを組み立てるんじゃなくて、全体像がある状態で細かいエピソードを抜き出して再構成する、みたいなやり方をしているので、全然参考にならなかったら申し訳ないんですが、ちょっと思いつくまま書いてみますね。
「いくつかの細切れのネタ(妄想)を組み合わせて一本のストーリーとしてまとめる」のってなかなか難しいし、どうにか出来上がっても繋ぎ方によっては印象がバラバラになってしまうこともあるかと思います。
バラバラに感じてしっくりこなくて、うまくまとめられないなあ、と途中で嫌になってしまうこととか。
なので、「1本のストーリーとしてまとめる」前に、たとえば、一番書きたいキャラクターなりエピソードなりをひとつ抽出して、ひとまずそこから広げていくのはどうかなと思います。
一番書きたいところがよくわからん場合もあるかと思いますが、「心の中でそのシーンを浮かべると自分がすっごく楽しい」という部分を選んでみてください。
それがたとえば、「学校でA君がB君に告白した」というシーンが浮かんだ場合、
・なぜ二人が学校にいたのか→二人とも同じ学校だったから・どちらかが他校生だけど相手の学校に忍び込んで会いに来た、どっちかが先生ないし卒業生、二人の母校に二人して忍び込んだ
とか、浮かんだシーンの解像度を高めていく作業をするわけです。
学校にいたのが何時頃のどの場所なのか、というのも、突き詰めていきます。
あとは、
・A君はB君になぜ告白したのか→①好きだから・②嫌がらせ・③そうせざるを得ない状況
①どういうところが好きなのか、好きになったきっかけは? いつから、どれくらい好き?
②なぜ嫌がらせをするに至ったのか→過去何かあった(→何があった?)・逆恨み→(a)イケメン気にくわねえ死ね・b)好きな子を取られた・c)勘違い)
③なぜそうせざるを得ないのか→脅されて(→誰に?)・そうしないと死ぬ(→何があったんだよ…)
とか、いろんな状況を考えてみて、一番しっくりくるとか、一番萌える状況、考えていて自分が楽しい状況を考えます。
この時大事なのは「前後の流れはさておいて、自分が一番楽しめる状況」を考えていくことかなと思います。
理詰めで「この方がよさそう」と当てはめて行くんじゃなくて、もう直感で、多少の矛盾はひとまず無視して、「自分はこういうのが好き」という方向で考えてみてください。
制服は何かなとか、私服はどんな感じかな、家ではどんな感じかな、好物は、持病は、末っ子か長男か、使ってるスマホのキャリアとメーカーは、みたいな、細々したところまで。
キャラクターを作る際に、よくこういう細かいところまで埋めていきましょう、っていう指南書みたいのがあるかと思うんですが、でもキャラクターシートをあらかじめ作って義務的に埋めていく…みたいな調子でやるとものすごくつまらないし、面倒なだけであんまり意味がないので、「キャラクターがこうだと想像したら楽しい」というところを大事にしてほしい感じです。
考えてもつまらんところは別に考えなくてもいいです、そういう描写が必要なシーンが出てきたら考えればいいだけなので。
推しが普段どうしてるのかな、と考察するのとかって楽しいじゃないですか。そういう調子です。
推しのことを考える時みたいに、相手にどういう設定が隠されているのか、推しと推しが会話したらどういうことになるのか、という小ネタをもっともっと増やしていくと、そのうちにそのエピソードが繋がり出して、たとえば「文庫一冊分の物語」とか「同人誌一冊」「投稿作一本」という規定枚数に縛られず、膨大な量のキャラクターの人生が浮かんでくると思います。
「小説本文には使いようのないネタだけど、想像してるだけで楽しい」という部分は絶対無駄ではなく、むしろ作品を支える重要なところなので、とにかく増やしていってください。
で、単発で放っておくのではなく、そこからさらに妄想を拡げてください。妄想の前後左右、上下を楽しく考えます。
別にメモとか取らなくても、暇な時、お風呂に入ってる時、寝る前とかに、キャラクターが会話しているところ、一人で過ごしているところ、大勢でいるところ、などを想像して、ひとりニヤニヤしてみてください。
「考えなくちゃ」と思った瞬間に義務になってつまらなくなるので、楽しい時に楽しい分だけ。
で、そういうのが浮かんで、ある程度キャラクターや世界観が自分の中でしっかり見えてきてから、改めて、「一本のストーリー」にまとめる作業に入ります。
同人誌やWeb小説とかなら、あんまり深く考えず書きたいところだけ書いた方が絶対楽しいし、私もしょっちゅうそういうことやっていますが、もし規定枚数に収めた上で話を纏めたいということであれば…、ですが、こ、これも我流なので全然参考にならなかったらすみません。
そろそろお話をまとめよう、という段階になった時は、もう細かくキャラクターとか世界観のことを解像度上げて考える必要はないので、むしろミクロなところから考え始めると切りが無いので、マクロなところから入ります。
ちょっと説明が難しいんだけど、お話をまとめる時、私はヤマ場とか途中のエピソードの積み重ねとかは最初まったく気にせず、とにかく最初にお話が浮かんだ時の「イメージ」を骨にしています。
たとえば、小説なりアニメなり映画なり、観る前に、「大体こういう話だな」と想像をするじゃないですか。
あるいは、読後に、鑑賞後に、「あれはこういう話だったな」と反芻するじゃないですか。
自分の書く話を、読んだ人が受ける「イメージ」が最初にある状態で始めています。
作品の傾向(コメディとかシリアス)とかとはちょっと違って、もっと漠然としたイメージなので、本当に説明が難しいんですが…。
細かいエピソードはどう描写したっていいし、何なら主役を取り替えたっていいけど、このイメージだけは絶対揺らがないようにします。
で、うーん、私は本当に理詰めで考えられず、全体のイメージが決まった時に大体話の流れも「こうしよう」というのができてしまっているので、どうやって組み立てていくのか有用な方法が書けない…のだが…。
なので、とりあえず書き始めてはみたけれど話がうまく流れず、どこかが間違っている気がする…と悩んだ時にやる作業を書きますね。
多分ここまで書いたことは気構えというか気持ちの問題で、次からがテクニックになるので、質問者さんが聞きたかったのはここからな気がしてきた…だらだらとすまない…。
まず最初に、PCで簡潔な雑プロットを作ります。
これは別に詰まってなくても、本文を書き始める前に必ず最初にやります。
ここでも、話の流れとか盛り上がりとか全然気にせず、書きたいところをどんどんメモ的に書いていきます。
私の場合は、小説の構成はとりあえず無視して、大体お話の時系列に合わせて書いていきます。
たとえば序盤では読者にとっては秘密のことでも、キャラクターが知っていること・知らないけど実際に起きていることは書いておきます。
ミステリだったら、最初に殺人が起きて、犯人がどういう行動を取って、から始まり、探偵が出てくるのがずいぶん後ということもありえます。(なのでプロットというのはちょっと語弊がある代物なんだけど)
お話の長さも気にしません。
付け足したり削除したり、という繰り返しになると思うので、手書きよりPCの方がやりやすいです。
雑プロットが出来たら、ここから改めて起承転結、あるいは序破急でエピソードを分けて、組み立て直します。
ちなみに起承転結は、Wikipedia先生から引っ張ってきますが、
* 起: 主人公の置かれている状態、劇の説明
* 承: 主人公の置かれている状態にある事件が起こり、これから段々劇が展開して行く過程
* 転: 一つの劇のヤマ場で結果に赴く為の転化
* 結: 承、即ち事件とそれによって起こった転化によって出された結果
となります。
余談ですが、私はどっちかっていうと、BLやキャラクター小説の場合、序破急(設定・対立・解決)の方が、しっくりくる気がします。
冒頭で状況がわかるエピソードを持ってきて、真ん中にキャラクター同志の対立・相克を置いて、最後に解決(恋愛なら成就+エロシーン)が読みやすい。
そしてこれ、(くどくてすみませんが)私の場合はですが、最初から「起承転結」「序破急」でお話を考えると、絶対うまくいかないです。
たとえば「二人をこういうふうに出会わせよう」「こういう手順で恋を芽生えさせよう」と理屈でエピソードを重ねていくと、書いててもものすごくつまらないので、まず「出会っちゃった二人がいる」状態で始めます。
捻りだして出会わせるんじゃなくて、出会っちゃったから物語が始まってしまうのです。
まだ出会っちゃってない時に無理矢理物語を捻りだそうとすると、途中で歪みが生じるので、「起」に合わせて二人を出会わせるのではなく、出会うシーンが「起」に合いそうだから冒頭に持ってくる、という感じです。
うまく説明できているだろうか…。
別れたところから始まる物語があってもいいわけです。その場合、別れた過程のある二人のお話の、頭に持ってくるのがその別離のシーンだとよさそうなので当てはめる。
別れのシーンを書きたいから別れそうな二人を考える、というやり方もあるのかもしれませんが、別れそうもない二人を物語のために無理矢理別れさせると、嘘をつくことになり、嘘は嘘を呼んで、つじつま合わせが大変になってボロが出ます。
だから先に雑プロットを作ります。
細切れのシーンを膨らませから雑プロットを作った場合は、そういうつじつま合わせがいらなくなりますので。
雑プロットの中から、「ここを物語の始まりにするといい感じ」「ここは承として生きるぞ」という感じに、「あるものを有効活用する」精神でやっていくと、物語が呼吸をしやすくなる気がします。
ちなみに、起承転結で一番大事なのは、「転」あるいは「結」だと思われがちですが、何を差し置いても「承」です。…と、何かで読みました。
「転」も大事なんだけど、「承」やそこに至るまでの重要な積み重ねなので、「転」のインパクトを大事にしたかったら、「承」に力を入れるべきだと。
なるほどなあと思いました。なので、承を大事にするといいかなと思います。
で、どうやって起承転結をまとめるかですが。
なるべく大きなノートに、横に四分割ないし三分割の線を引きます。B5サイズだったら見開きで左右使って。私はA3の方眼紙でやってます。
ここでは四分割の方で説明しますね。
四つに分けたのはもちろん起承転結にしたいからで、横線で分割しますが、割合としては起1.5/承5/転2/結1.5くらいです。
さらに縦に、二本線を引きます。
左・中・右と分けますが、これは左2/中5/右3くらいかな。
左の起承転結には、一行~五行くらいで、概要を書きます。
ここからは物語の時系列ではなく、小説の流れを書いていきます。
起 A君とB君の出会い
承 仲よくなる
めちゃ喧嘩する
C君が出てくる
わかり合ったはずなのにさらに揉める
転 誤解が解けて告白+エロシーン
結 喧嘩の元凶も解決。ラブラブハッピー😄
みたいな雑な感じでやってます。顔文字とかイラストとか、ツッコミとか、アホみたいなものも書きます。
どうせ誰にも見せないので自分にだけわかればいい…。
真ん中の起承転結には、もうちょっと詳しいエピソードを書きます。
起 A君転校してくる
B君と部活が同じになって一緒に帰る
承 ラーメン屋にしょっちゅう二人で通うようになる。A君→B君にときめき、B君もまんざらでもない反応(※とか、具体的なエピソードと感情の動きもメモ)
A君、B君が幼稚園の頃に出会ったクソガキだと気づく
A君の回想を入れる。C君のことを思い出す。
C君が出てくる。
B君A君のことを思い出すが、忘れているふりを貫く
…のように、実際描写するエピソードを並べていく
転 B君の嘘がばれてA君めちゃおこ😡
A君が誤解していた部分が発覚。B君そんなに悪くなかった! Cが悪かった。
誤解が解けて気持ちが通じ合う。
二人は幸せなキスをする…。
結 いつもの日常。Cは殺す。ラーメン屋END。
めちゃくちゃつまらなそうだなこの話。すみません内容はともかく例として。
こんな感じで、左よりも多少具体的なエピソードと感情の動きを書いていきます。
右の起承転結には、真ん中に付け足したいこと、訂正したいこと、あとはたとえば転の「誤解」の伏線が承にあるなら、その部分に→を引っ張っておく…とか、「こことここはエピソードの順番を入れ替えた方がわかりやすい」とか補助的な書き込みをどんどんしていきます。
紙が足りなくなったら、継ぎ足してください。なるべく一枚で全体を見通せる方がやりやすいです。
この紙を何度も眺めて、頭の中に自分が書くべき物語を浮かべます。
そうすると、「このエピソードも入れた方がわかりやすい」「ここはいらないわ…」みたいのが見えてきます。忘れないようにメモを足したり、覚えていられそうなら次の作業で書き加えます。
いまいち納得いかない場合は、この起承転結ペラ紙を何度か作り直します。めんどくさい人は付箋使うといいですね。
ちなみに私は最近PCのアプリ(scappleとかOneNote)を使ってます。手が死ぬのと紙の管理がいい加減むずかしくなってきたので。
OneNoteについてはこちらで使い方を書いてます。
起承転結のペラ紙に納得がいったら、これをそこそこちゃんとしたプロットに起こします。
ペラ紙では箇条書きになっていたり、補足で書き足したところが多いと思うので、多少整理してまとめるわけです。
この時は大体B5の大学ノートの片側だけ使います。反対側にまた補足を書くからです。
この時はもう縦線横線いらず、少し詳しいあらすじを、起承転結で決めた流れに沿って書いていきます。
※私が詰まった時にやるのは、この「起承転結のペラ紙を何度か作り直す」と「そこからプロットを起こす」の部分です。
できあがったプロットを、PC等デジタルに移します。手書きでもいいんだけどやはり手が死ぬ。手が痛くて面倒なところを省いてしまう根性なしなので、デジタルに頼ります…。
そのあらすじに、また補足を入れたり、必要ならエピソードを入れ替えたり、強調できそうなところを「※ここはねちこく書く」とかマークしとくと後で楽です。
この辺りで、自分だけにわかるプロットではなく、他人に読んでもらっても意味のわかる形になってくるかと思います。
一回、「自分が何も知らない読者だったら」と想定して読んでみたりすると、足りないところ、邪魔なところ、「やべぇめちゃ萌える私天才…」というところに改めて気づくこともあります。萌えるのは自分が好きなものを詰め込んである証拠なので、ここで全然気持ちが上がらないとちょっとやばい。上げてこう。
これで、小説の流れに沿って、起承転結のあるプロットが出来上がりました。
あとはプロットを元に、小説の本文を書いていけば完成です。
私の場合はこの前に一回、大体の台詞や説明を書いた粗書を作りますが、これはいらない人にはいらないと思うので割愛します。
ねえすっごく長くない!?
簡潔に説明できなくてすみません、起承転結をノートにまとめる辺りからでもいいかなと思ったんですが、百回くらい書いた気がしますが「私の場合は」全体像を掴んでからじゃないと1本の物語としてまとめることができないので、前提のようなものが長くなってしまった…。
少しでもお役に立てる部分があれば幸いです。