なんでも鑑定団の音楽と軍隊行進曲だけが聞こえるマンション

日常あれこれ

今さび猫と人間とルームシェアをしているマンション、古さはあるけどやたら頑丈な造りで、「地震の際は、慌てて避難するよりこのマンションにいる方が安全だから、飛び出していかないでね」とエントランスに貼り紙がしてあるくらいだ。

なので他の部屋の音は、リノベーション工事でもしていない限りほとんど聞こえない。
マンションの規約と住民の目が厳しく、入居当初はちょっとした物音も立てないようにビクビクしていたけれど、ペット可の物件で大型犬も飼われているようなのに鳴き声のひとつも聞こえてこないので、そのうちあまり気にしすぎず普通に暮らすようになった。

ところがある時期から、二種類だけ他の部屋から聞こえる音があることに気づいた。

ひとつは「なんでも鑑定団」の、鑑定中に流れる音楽だ。
他の音や人の声は聞こえないのに、例のあの曲だけが聞こえてくる。
音域の問題なのだろうか。
自分自身が静かにしている時にしか聞こえないので、迷惑ということもないのだけれど、この曲だけ割と頻繁に聞こえてくるから不思議だ。再放送もあるのかな。

あとは去年の終わり頃から、夜遅くまでピアノの音が聞こえてくるようになって、若干困っていた。
一応「ピアノなどの楽器は夜九時以降禁止」という規約なので、「駄目なのでは…?」と気になってしまうが、うるさいと苦情を言うほどの音量ではない。
なのに何を困っていたのかといえば、一時期ひたすらに「軍隊行進曲」の冒頭ばかりが、しかも拙い演奏で繰り返されていたからだ。

『シューベルト:軍隊行進曲』(Schubert, Trois Marches Militaires D733 Op.51)(ピアノ楽譜)

この一段目~三段目の途中くらいまでを、ミスタッチありつつ、延々、延々と…。
そのうち上達するだろう、としばらく見守って(聞き守って?)いたけれど、一向にうまくなる気配はなく、同じところで突っかかっては冒頭からやり直すの繰り返しだった。

知っている曲なので「この次はこの音」と何となく身構えるのに、全然違う音が鳴ったりして、「アレッ」となる。
段々本当のメロディがどんなものなのかわからなくなって、ちゃんと演奏されたピアノ曲を時々聞き返さなくてはならなかった。

子供ならうまくなるので、多分、初心者の大人が自己流で練習しているんだろうなあ。
ご年配の方が頑張って指一本で弾いているところを想像したら、なんとなくしんみりして、応援したい気持ちにもなっていた。
がんばれ。今日こそ、せめてもう何小節か先まで行こう!

しかし応援の心は裏切られた。先月くらいから、急に別の曲になったのだ。
しかも私は知らない曲なので、合ってるのか間違っているのかもわからない。
軍隊行進曲は完璧に弾きこなせず諦めたのか、あるいは発表会などがあって無事終わったのか…。

どこの誰が弾いているわけでもないのに、気になる。
でも「どこの部屋の人がピアノを弾いているのか?」と探りを入れたら、苦情だと思われて音が止んでしまいそうなので、我慢している。

願わくば、軍隊行進曲を最後まで聴かせてほしいなあ。

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Posted by eleki