刀剣旅行で久能山東照宮に行ってきた
年に何度か、通っている日本刀の勉強会で刀剣鑑賞のための旅行に行っています。
会員のほとんどがずいぶん高齢の男性ばかりなんだけど、そのおかげで、旅程がだいぶ楽ちんです。
おととしは京のかたな展のために京都に行ったけど、東京から車で移動して、その車がまあ外国産の自動運転車なもので、乗り心地が良すぎる…。
割合車酔いしやすいタイプなんですが、これまで一度も具合が悪くなったことがないという。
今回も途中途中サービスエリアで休憩を取りつつ、のんびり東京から静岡まで行ってきた。
会の講師の先生と同乗したので、行き帰りに刀についていっぱい話を聞けて滅茶苦茶嬉しく楽しい旅行でした。
車の中から見えた富士山が綺麗であった。
静岡に着くと、清水エスパルスと清水次郎長とちびまる子ちゃんという文字がやたら目についた。
昼食はちびまる子ちゃんランドの中で取りました。
初めてそういった施設があることを知りました。
海鮮丼を食べた。
さすが海があるところはお魚がおいしいなあ!
と埼玉で育った私は思っていたんですが、刀剣会のお父さんたちは「あんまりだった」と言っていた。
刀剣会にいらっしゃる人々は、何というか、お金に対する桁の認識が私のような庶民と違う気がするんですよ。
ごはんを食べつつ会話が聞こえてきたんだけど、
「100万とか150万まですぐ出せるけど、200万超えるとちょっとためらうよね」
「だよねー」
みたいな話をしていて、何のことかっていうとまあ刀剣会の人なんだから刀の話です。
趣味で買うなら150万まではポンと出せるけど、200万になると迷うって。
200万も持ってないから出せないよね、じゃなくて、持ってるけどちょっと迷うよねって。
大根99円はすぐ出せるけど、128円になるとちょっと迷うよね、みたいなノリです。
最初に会に通い始めた頃、私と、一緒に通ってる同居人に向けて「渡海さんたちは刀買わないの?」って気軽に聞いてきたことを思い出す。
「でも、お高いんでしょう?」
「車一台分くらい出せば買えるよ」
これですよ。勿論軽じゃなくて、VOLVOくらいの一台ですよ。何でか刀剣会のお父さんたちはみんなVOLVO乗ってるんですよ。
「200万ためらいつつもどうせ結局買うんだろうな…」と思いつつ海鮮丼を食べ、同居人と、「200万までって、何に対してなら出せる?」みたいな会話になりました。
「パソコンとか、出そうと思っても今はそこまでしないしね」
「印刷代もメジャージャンルのアンソロを豪華装丁で作ったりしない限りそんなにしないしね」
今コミケで自分たちしかいないようなマイナーカップリングで本を出しているので会話がいろんな意味で悲しい。
結局、
「猫が難病にかかって治療に200万かかるっていうなら、迷わず出すであろう」
という結論になりました。
猫はね。仕方ないよね、出すよね。
閑話休題。
ところで東照宮と言われて、前日まですっかり栃木の日光東照宮かと思っていました。
今回は「正式参拝するから、きちんとした恰好で来てね」と言われていて、いつもは動きやすい楽ちんな服装で気軽に移動していたんだけど、ちゃんときれいめのスカートにパンプスとか履いていってしまい…。
久能山東照宮って、久能山の山下から1,159段の表参道があるんですよね!
出掛ける直前に、「靴はスニーカーでもいいよ」と言われていたんですが、「ちゃんとした服など持っていない」と言ってしまった私に気を遣って言ってくれたのかと思って、一応は持っていたパンプスにしてしまったんですよ…。
しかもストッキングにスカート。
行ったのは11月だったので、山はもはや秋というより冬の気候なのでは。
戦々恐々と静岡に向かったんですが、幸い、天候に恵まれていたので寒さという点では大丈夫だった。
しかしパンプスで1159段の参道を登るよりも怖ろしい現実が私を待ち受けていた。
ロープウェイ…私は割とガチ目に高いところが無理で…。
しぶしぶ乗り込んだ後は、七十代八十代のおじいちゃんたちを差し置いてベンチに座り、目を閉じて同居人に縋りついていました。
不憫に思った他の会員さんが私のスマホで撮ってくれた写真。
途中「もう着いたよ」などと大人げなく嘘をつかれて、「なんでそういうこと言うんですか!」などとガチ切れしつつ、無事到着しました。
本当にいい天気だったなあ。
ロープウェイを下りて、どんどん上に登って、正式参拝。
拝殿に入って、畳に正座してご祈祷を受けるわけですが、年配の方が多いので、神社の方から正座椅子っぽいのに座っていいですよと言われたのに遠慮したことを直後に後悔した。
正座したら足が攣ってしまって、まったく集中できなかった…。
久能山東照宮の拝殿は国宝になっているそうで、参拝が終わったあとに、拝殿の造りについてなどいろいろ教えていただいて興味深かったです。
内壁に描いてある絵が建立当時のものらしいけど、一部は修繕せずにそのまま、多少壁が朽ちた状態で残してあって、直しきってしまうよりは当時の状態で残してあるのはいいなあと思う。
拝殿の他も様々な施設が国の重要文化財になっていて、神職の方から説明を受けつつじっくり見られて楽しかった。
格子の奥に金箔が貼ってある壁があったんだけど、3センチ四方くらいの格子に一枚一枚手で貼ったと聞いて気が遠くなったよ。
家康公の神廟。
家康公のご遺体が実際のとこどこにあるのかは色々議論があると聞くけれど、神社的には「うちにあるということになっているので、うちにある」らしいです。
信仰の問題なので、真偽の議論には関わらない方針というのが、おもしろい。
家康公の愛馬のお墓。
日光は真っ白い神馬がいたなあ。
馬のお墓があると何か嬉しい。馬はいい。
神庫はちょうど10月の台風で一部壊れてしまったのを修繕したばかりだそうで、漆がつやっつやしていました。
日数が経つとやはりくすんでしまうので、塗り立てを見られる機会は貴重らしい。
神庫のそばに建ってたいい大木。何百年と生きている木らしい。
境内をあれこれ案内していただいてから、久能山東照宮博物館へ。
ソハヤノツルキの写しの写し(重要無形文化財保持者(人間国宝)刀匠宮入昭平作)が展示されていました。
ソハヤノツルキウツスナリの写しなり。
あれやこれと刀剣を鑑賞した後に先生から講義を受けました(メインイベント)。
たっぷり東照宮と刀を堪能したのち、撤饌をいただいて、解散。
解散といってもみんな大体家が同じ方向なので、また車に分乗して一緒に帰りましたが。
最初に書いたとおり、私が載せていただいた車には講師の先生が同乗していたので、興味深いお話をたくさん聞かせいただいたんですが、運転していた男性(私より年下だけど、家が古物商で昔から刀剣に興味があり、私よりずいぶん前から刀剣会に出入りしている)との会話は、聞いていてもさっぱり理解できませんでした…。
「それはどういうことですか?」と聞いても、先生と男性と二人して「うーん、まだ渡海さんに言ってもわからないかな」と流されてしまった。
刀、まだ全貌すら見えない世界だなと改めて思いました。
刀剣会に入会して五年目なんですが、まださっぱりわからないことばかりで、でも毎月の勉強会の他にこういう旅行に行くとちょっとずつ見方がわかってくるので、今年もできるだけ見て回りたいなあ。
神社も好きなので、神社にも行けて刀剣も鑑賞できる旅行は本当に楽しいです。
そして刀剣展などにおもむくたびに、「刀剣女子が増えて嬉しい」という言葉を聞く。
私は刀剣乱舞をはじめる前から刀が好きで、見かけたらちょくちょく展示は見ていたんですが、全然見方がわからなかったし、そもそも展示自体があんまり(少なくとも大々的に宣伝するような規模ですぐに行ける範囲のものは)やっていなかったので、今は頻繁にあっちこっちで催し物があって、解説つきでじっくり観賞できるようになったのが、本当に嬉しいです。
ずっと一人で行ってたけど、同居人も興味を持ったので一緒に行けるのも嬉しい。
もはや一時のブームではなく刀剣に親しむ人が増えた気がするので、このまま、毎年いっぱい刀を見られる環境が続くといいなあ。
日本平ロープウェイの近くに建っていた日本平デジタルタワー。
ロープウェイの駐車場では自衛隊が何か訓練らしきことをやっていた。
自宅用のお土産に日本平天望回廊こまんじゅうを買いました、おいしかった。