郵便局の順番待ちで試される
そういえば年末に本格的に具合が悪くなる直前に書いた文章がそのままになっていたので今さら更新。
書いた時はものすごく真面目な気持ちだったぽいんだけど、読み返すとアホみたいな文章だけどまあいい…。
◇◇◇
この年末、年内にやっておくことが山積みだというのに性懲りもなく胃腸をやられ、しかし病院に行くとどのみち今日が終わってしまう…という恐怖に怯えつつ整腸剤と痛み止めと滋養強壮薬を浴びて、どうしても今日出すべき荷物を抱えて郵便局へ。
時間帯がよかったのか20人待ちくらいだった。昨日は44人待ちだったのでかなりマシ。
断続的に襲い来る胃の激痛にひっそり悶え苦しみつつ、待合の椅子も塞がっているので、人に迷惑をかけぬよう何食わぬ顔で壁際に立って、ひたすら自分の番号が読み上げられるのを待つ。
と、近くの待合椅子に座っていたおばあさんが、手招きしている。まったく知らない人だけど、街中で知らない人に話しかけられる確率が高い私は「きっと係員がすぐそこにいるのに、なぜか私に何かの手順を聞くのだろう」と思いつつおばあさんに近づく。
「これ、あげるから」
差し出されたのは順番待ちの番号札だった。
「ちょっともうね、行かなくちゃいけないから。あなたこの番号より後でしょう? これ使いなさい」
「あ、でも窓口に返せば…」
「いいのいいの、その方が早くすむでしょう?」
遠慮する私に強引に番号札を押しつけて(というか、発送するために抱えていた荷物の上に番号札を勝手に置いて)おばあさんは郵便局を出て行ってしまった。
もしかしたら具合が悪いのに気づいて、譲ってくれたんだろうか――と一瞬思ったけどそういう雰囲気でもなく、単に用事を思い出したり、待つのが嫌になったのだろう。
さてこの番号札をどうしよう。
自分の番号とおばあさんがくれた番号を見比べて迷った。
私は669。おばあさんは666。3つ違いなので大した違いはない。呼びだし機の表示を見ると、655。
全体的にものすごく微妙な数字だ。
私がおばあさんの番号札を使うと、私のあとの番号札を持つ人にとってはおばあさんがいなくなった分だけ早くなるが、667、668番の人に対しては、割り込みになる。ずるをすることになる。
しかし私は滅茶苦茶胃が痛いし、今は落ち着いているけれどいつビッグウェーブがやってきてトイレに駆け込まなくてはならなくなるかもしれない。
具合が悪いんだから、甘んじて親切を受けてたって罰は当たらないかもしれない。
と三秒くらい葛藤したけど、私は私がそういうずるができないことを知っているので、おばあさんのせっかくの厚意には申し訳ないけど、もらった番号札は握り潰すことにした。
特別厳しくしつけられたわけでもないけど、私はそういうずるができない。
割り込みとか、ネコババとか、ゴミの不法投棄とか、人にいうと「真面目だなあ」と嘲笑われてしまうけど、絶対にバレないという確信がある時ですら踏み込めない。
小学生の頃、急に悪いことがしてみたくなって、駄菓子の小袋を地面に捨てようとした。
ものすごく心臓がバクバクして、怖いんだか興奮してるんだかわからない気分になって、長い葛藤の末に小袋を公園の地面にそっと落とした時、「ああ、私は何か大事な何かを失ってしまったのだ」と絶望的な気分になった。
結局拾ってゴミ箱に捨てたので、傍から見ればゴミを落として拾ったよい子なんだろうけど、その時に一線を踏み越えてしまったような深い絶望が未だに忘れられない。
これが、昨日のように40人待ちで、おばあさんの番号が私の番号より20くらい若くて、胃痛と腸の限界を迎えていたら、もしかしたら使わせてもらったかもしれないけど。
これが私だ。私の生き様だ。いい子でいよう。大抵のことはダメだけど、こういう部分で意思がはっきりしている自分のことが割合好きだ。
痛む胃を押さえつつキリッと順番待ちをしていたら、667と668の人は呼び出されても出てこなかった。待ちきれずに帰ってしまったらしい。
よくわからないけど「なるほどなあ」と思いながら荷物を発送した。
ゆうパックのスマホ割は、一年に10回以上荷物を出すと10パーセントオフになるので、たくさん荷物を出す人にはおすすめですよ。