ルームシェアをしているオタク女ふたりが東京で猫を譲り受けることの難しさ【4/おわり】
譲渡サイトでサビ猫2匹の里親を申し込み、やっと返事が来て、保護主さんが「飼育環境の確認のために直接自宅を見に来る」ことになりました。
この子たちが…この子たちが…この子たちが来るのだ…!!!!
喜んで!!! と即座に返信をしたわけですが、若干戸惑ってもいました。
てっきり「猫を届けにくるついでに、里親詐欺じゃないかを確認するのかな」くらいの気持ちでいたので、先に保護主さんだけが見に来ると言われて、アッ、やっぱり個人の保護主さんでも色々厳しい? と不安になる。
少しでも飼育環境に瑕疵があったり、わたしたちが胡乱だと思われたら、あのサビ猫たちはほかの人に譲渡されてしまうのだろうか。
今のところ順位が上というだけで、駄目なら候補から外されてしまうかもしれない。
一度でもうちに来ると喜んでしまったので、落差でとても不安になり、Twitterなどで経過を呟くこともできないし、友達にすら言えない。
しょっちゅうケイティに会ってくれたり、お弔いのお花を贈ってくれたりした近所の友達にだけは、部屋の片づけを手伝ってもらったので、伝えましたが。
仔猫を迎えるにあたって、保護主さんに認められるような部屋作りをしなくてはならない…!
何しろ我々はオタクです。ルームシェア開始に際してだいぶ処分したとはいえ、フィギュアだの、ぬいぐるみだのがもりもり居間に並べられている。
(しかも私は自分の部屋にオタクグッズを置くのが嫌で、ほとんど居間の飾り棚に置くようにしていた)
別にオタクなのを隠すつもりはないけれど、仔猫が来るなら棚を登るかもしれないし、フィギュアなどが落ちてきたら危ない。
それで部屋の掃除をしながら、猫をお迎えするための買い物をしながらも、また滅茶苦茶ナーバスになっていて、
「猫が来るかも…」
「いや、断られて辛い気持ちになるかも」
「猫来るんだ!!!!」
「いや、来ると決まったわけじゃない…」
と、秒単位で躁鬱を繰り返し、具合が悪くなったりしてました。
部屋の片付けが結構大変で(オタクグッズをどうにかするだけじゃなくて、実は一年経っても引っ越しの荷物が片付いておらず引っ越し業者の段ボールが積まれたままだったので、それもしまい直したり、処分しなければならなかった)、
「ここまでしてるのに猫がこなかったらどうしよう…」
と弱音を吐くたびに、友達から、
「だったらちゃんと掃除しよう!」
と励まされたり、
「オタクが気持ち悪いから仔猫を譲れないって言われたらどうしよう…」
とウジウジすれば、式部さんが、
「そんな相手と繋がりたくないからこっちからお断りだ」
と据わった目で力強く言ったり。
それでも一秒ごとの躁鬱は治まらず、里親を断られた時になるべくダメージを少なくするためのシミュレーションも繰り返していました。
浮き沈みの激しすぎる毎日を過ごし、とうとう保護主さんが飼育環境のチェックのためにやってきました。
保護主さんは、ものすごく仕事ができそうな感じの細身の美人だった…。
いやご本人の見た目は関係ないと思うんですが、譲渡サイトからわかるのはおおまかな地域程度だったので、駅まで迎えに行った時に急にシュッとした美人が現れて驚いたのだった。
保護主さんが美人なのと、これから審査されるのだという緊張感で舞い上がり、フワフワしながら家までご案内いたす。
そして我が家に到着した保護主さんは、特に家の中を細かくチェックするでもなく、ケイティが使っていた猫タワーを見て「うちのより大きい!」と驚かれたくらいで、すぐに契約書を取り出しました。
サイトの規約で、契約書なしの譲渡は禁じられている。最近はどこの譲渡サイトでも愛護団体でも、契約書なしの譲渡はあり得ないっぽいですね。
署名捺印を、と言われて「アッハイ!」と名前を書いて判子を押す。
えっ、早い。
早くない!?
どうやらすでに、飼育環境を見に来る前から、保護主さんの中ではうちに譲ることが決定していたらしい。
てっきり詳しく厳しく審査されると思っていたので、あまりに素早い契約の締結に正直ビックリしました。
一応サイトからの申し込みの時点で、「ペット可物件である」、「家族全員が動物飼育に賛成している」、「避妊手術やワクチンは必須」、「終生室内飼い」など基本的なところを確認されてはいたのですが。
それにしたって話が早い。
驚いていると、
「友達はみんなもう猫を飼っているからお迎えできるとしても一匹だけ、他に問い合わせをくれた人も元気な子の方だけを希望で、二匹一緒に引き取ると言ったのは渡海さんだけだった」
「最初の問い合わせで、骨折した子の具合や介護について確認してくれたので安心した」
「姉妹で仲がいいので、引き離すことが考えられず、どうしても一緒にもらってほしかった」
と言われて、ああ本当に、絶対姉妹一緒にって伝えておいてよかった…! 介護の覚悟も決めておいてよかった…!!
小サビたちに限らず、生まれて間もない仔猫の譲渡だと何かのウィルスを持っていてもわからない場合があるんですが、猫を探し始めた時点で式部さんと「うちに来る子は絶対に運命だから、どんな子でもお迎えする」と合意していた。この辺りはお互い動物飼育や看取った経験があったので、覚悟しやすかったかなあと思います。
あとは「メールの文面がしっかりしていた」とも言われて、うおおおお滅茶苦茶緊張しながら丁寧に問い合わせの文章書いてよかった~~~~~~!!! と口には出さずに打ち震えていました。
最近メール書くのにここまで緊張したことあったかっていうくらい緊張しながら、死ぬほど推敲して、やっと送信してたのだった。
「正直メールの時点でヤバいなって思った人もいたので…」
と保護主さんがおっしゃってたんだけど、メールの文面だけでヤベェってわかるのはどんな感じなんだろう。
わたしもヤベェ匂いがしないように、自分がいかに猫を、サビ猫を愛しているかの作文は八割削りました…。
はっきりとは聞かなかったし言われなかったけど、里親候補を何人か見繕って、その中で吟味した上で決めようとしていて、時間がかかったっぽい。
やっぱり私たちのプロフィールでは即決できない感じではあったんだろうなあ。
猫のためにと考え抜いて我々が選ばれたというのなら、これほど嬉しいことはないのだ…せっかちですみません…。
で、一応、契約を交わしたあとも「長く留守にする時の対応」や、「脱走防止について」などいくつか質問はあったけど、「聞かれたらどう答えよう」とちょっと迷っていた職業についてや、私と式部さんのルームシェアに至った状況については、全然聞かれませんでした。
そしてついに、ついに、翌週、小サビたちが我が家にやってくることと相成りました。
なりました~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
サビの妹たちが来るよケイティ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!「じゃあ次は車で猫を連れてきますね」と席を立つ保護主さん。
あまりにサクサク話が進むし、こちらを全面的に信頼してくださっているのが伝わって嬉しかったんだけど、もうすっかり猫を譲ってくれる気持ちを固めているようで細かいチェックは全然なかったのに、なぜ環境確認に来たのかが、やっぱりちょっと不思議だった。
飼育環境の確認が重要なのは重々承知のうえですが、保護主さんの滞在はほんの二、三十分程度で、チェックタイムよりもお互いの猫愛話の方が長いくらいだったので、なおさら。
帰り道に駅まで送りがてら訊ねたら、保護主さんはシェルターから猫を引き取り、その時にシェルターの人が先に飼育環境を確認しに来たので、「譲渡する時はそのようにするものだ」と思って、同じようにしていただけのようでした。
そしてご自身が一人暮しで、多分フルタイム勤務の会社員のようだったので、審査が厳しかったらしい。
「シェルターの人には、あれもだめ、これもだめ、あれは片づけてください、捨ててくださいって細かく言われたけど、私は全然気にしないので」
と本当にざっくばらんに言われた。
お通しした居間のフィギュアやぬいについては、「ああいうぬいぐるみは噛まれたり破られたりするかもしれないけど、あなたたちはたとえ壊されても猫を怒らないでしょう?」って言われて、全力で頷いたりした。
躾で叱るだろうけど、感情的に怒りはしない。大体猫が行きそうなところに壊れそうなものを置いておく方が悪いのだ。猫は悪くないのだ
個人で捨て猫を見兼ねて保護しただけあって、保護主さん自身も猫好き…というか、猫馬鹿の域に入る感じで、すごく話が弾みました。
見た目クールな美人なのに猫の話をしていると若干様子がおかしかった。
「最近空前の猫ブームっていうけど、最近じゃなくてずっと昔から猫はかわいいのに!!!!」と力説し合い、固い握手を交わしたりしました。
というわけで、浮かれまくってTwitterにも猫が来る猫が来ると呟きまくる。
ね…ね…ねこがくるよ…_:(´ཀ`」 ∠):_ ねこきまったよ…
— 渡海奈穂|4/19電書BL新刊 (@eleki) May 20, 2018
さび猫が二匹来るよ!!!!!
— 渡海奈穂|4/19電書BL新刊 (@eleki) May 20, 2018
お祝いをくださったみなさま、どうもありがとうございました。
餌のお皿や仔猫用のごはん、オモチャなどをもりもり買い込み、約束の翌週を迎える。
高速道に乗って、車に運ばれ、サビ猫がやってきました。
小さいのが二匹。
保護主さんは仔猫二匹入りのキャリーバッグと、そして巨大な猫型爪とぎを細い肩にかついでいた。
この右下のやつ。結構大きい。
きっと最初は知らない家で怯えるだろうから、勢い込んで撫でたり抱き上げたりせずに、無視しよう、と決めていたんですが。
小サビニ匹、まったく物怖じしない…。
玄関先で「おうちだよー」と保護主さんがキャリーを開くなり、小さい錆色の毛玉が2匹飛び出してきて、あっちこっちチェックを始める。
洗面所兼脱衣所にトイレを置いてあったので(ケイティのやつをそのまま、掃除だけしといたやつ)、匂いを嗅いだり、早速洗濯機の裏に潜り込んだり。
二匹とも楽しそうにやってるので、まあ予定通り放置して、保護主さんと軽くまたお話しする。
猫は早速トイレで上手に用を足したりしていました。賢い! 可愛いうえに賢い! パーフェクトすぎる!!
保護主さんからは、猫を譲ったあとはもうそちらに完全にお任せするので、定期的な報告もいりません、とはっきり言われた。
言うまでもありませんが、保護主さんは責任を丸投げしたわけではなく、こちらを全面的に信頼して、委ねてくれたのだ。
こういう形で譲渡が成立して、本当に、本当に、幸運だったなと思います。
たとえそれが必要なことであれ、個人的なことやセンシティブなことを根掘り葉掘り聞かれて嫌な思いをして猫を譲ってもらって、家の中に介入されてあれを捨てろこれを置け餌はこれだと指示されて、その後も定期的に写真を撮ってメールを報告を…っていうのは、どうも気が重い。うちの子になるはずなのに、「借り受ける」感じがして、厳しい愛護団体の規約はどうしてもしっくりこなかった。
そういうふうに全部決まってる方が助かるって人もいるだろうし、それで幸せになれる猫がいるのもわかるので、そのやり方自体を否定しているわけではありません、しつこいようですが念のため。
ただ私たちはこれまでも猫や他の動物と暮らしてきて、自分と動物の関わり方についても考えていたから、縁があって人生の長い時間を一緒に過ごせるなら、自分たちで思ったようにやっていきたかったのです。
まあそれ以前に愛護団体の方からお断りだったわけだけども。
猫が元気に長生きするように努力するっていうのは勿論大前提で、そこまでのアプローチがそれぞれの飼い主で違うのも当然なので、譲る方も譲られる方も、相性がいいとハッピーだよねと思います。
そこが合わずに譲渡を断られたり、そもそも応募もできないという事例をたくさん見て、難しいなあと改めて感じるし、猫と暮らす上でのポリシーが一緒の保護主さんと巡り会えたことが奇蹟のようにも感じました。
保護主さんの猫さんと一緒に。
今になって振り返ってみれば、四月にケイティがいなくなり、五月にはもう新しいさび猫を手に入れてるって、すごく安易に見えるよなあ。
でも二ヶ月弱、毎日本当にしんどくてしんどくて、もう二度とあの時間を体験したくない。
この一連の記事を書く間にも、地元の愛護団体のさらに嫌な話を聞いてしまったり思いがけないところで名前を目にしてへこみ、やっぱりどうしても相容れねえ団体とは相容れねえなあと再確認してしまった。
「自分も譲渡してもらうまでが大変だった」「友人が断られてへこんでいた」「結局ペットショップで買った」のようなメッセージもいただいて(返信可のものはのちほどお返事しますね)、そういう方たちには、「個人の保護主さんがいいかもしれませんよ」とお伝えしたい。
審査の厳しさは一緒かもしれませんが、団体だとどんどん持ち込まれる猫の対応がある程度機械的というか条件で絞らざるを得ないかもしれないけど、たまたま猫を拾ってしまった人が譲渡サイトに登録した場合、交渉の余地が多少はあるかもしれない。きちんと動物を飼育できる環境が整っているにもかかわらず、単身だの未婚だの高齢だのフリーランスだの賃貸だのだけを理由に申し込むことすら許されないってことは(それほど)ないと思います。
でも譲渡サイトの運営からのおしらせを読んでいても、詐欺があまりに多すぎるので最低限の審査と規約は譲渡する方もされる方も絶対あった方がいいですよね。
譲る方も、規約外の料金を請求するトラブルがあるようで、申し込まれる方は気をつけてください。
私たちの場合は相手が保護活動をしていない個人の保護主さんだったので、料金が一切かかりませんでした。交通費以外は受け取ってはいけない規約なので。そして交通費も駐車場代すら受け取ってもらえなかった…。
うちの子なのでワクチン代も払いたかった。
むしろ手土産にお菓子までもらってしまったよ(おいしかった)。
譲渡サイトでは難しい場合、特に漫画家さんや小説家さんなどは、お仲間が保護ボランティアやってるかもしれないので、探してみるといいですよ。と、タイミングを逸した私が書いておく。
私が知ってる保護ボラしてる人はみんな漫画家さんです。すみません小説家に友達がいないので小説家にも多いのかもしれないがわからん。
同業者なら生活環境に理解があるし、変な話ですがこのご時世SNSが発達しまくっているのでお互い保険にもなる気がする。譲渡された方がTwitterで猫自慢していれば(どうせするでしょう!?)、保護ボラさんへの細かい報告もいらないだろうし。
それで私たちも、職業で怪しまれたら、Twitterをお伝えして「一応名前の出る職業なので、猫を虐待したりできません」というような証明をしようと思っていた。上記の通り全面的に信頼してくださったので必要ありませんでしたが。
あとはどうか、ペットショップで買った人を責めないでください。
そうせざるを得ない事情があるかもしれないので、この記事を読んだ人だけにでも知ってほしいです。
ペットショップの中でも、ケージを広くする、しっかり散歩をするなど環境をよくしようと努力していたり、売り上げを保護団体に寄付していたり、頑張ってるところもあるわけです。
それでもペットショップが憎い全部潰せ賛同するおまえも許さぬ、という人は、私にメッセージ送ってきても何も変わりませんので、ご自分でペットショップが必要なくなる方法を考えて実践してください。
皮肉で書いているのではなく、生体に害のあるペットショップも動物虐待も殺処分も行きすぎた愛護団体もなくなってほしいと思うけど、私には方法がわからないんです。
「現実的な活動をしていない人を滅茶苦茶に罵倒すればペットショップがなくなり、殺処分がなくなる」というのなら、貴様を滅茶苦茶に罵倒してやるからメールアドレスを添えてメッセージを寄越すがいい。
みたいなことがこの記事の下書きに書いてあって、あっ、やだ~~~私ちょっと過激派☆〜(ゝ。∂)???? と思って削ってたんですが載せてしまったではないか。
生々しく怒っていた頃に書いてたんですが今も思い出すと怒りがぶり返すので大人げない。
罵倒されたくないのでメッセージは寄越さないでください。
殺伐とした画面を和ませるためのケイティとおともだちです
まあとにかく、ひたすら運よく、うちに小サビたちがやってきました。
同じような環境の方でも、諦めずに猫がお迎えできるようお祈りいたします。
ちいさかったな~。
おしまい