ルームシェアをしているオタク女ふたりが東京で猫を譲り受けることの難しさ【2】
続き。
地元で猫を譲り受けることを諦め、譲渡サイトを頼ることにしたわけですが。
私たちは元々「自力でお迎えに行ける距離にいる、メスの、できればきょうだいを2匹、片方は何が何でもサビ、そして避妊手術前の仔猫」という条件で探していました。
「たまたま自分たちが拾った」「お世話になっている動物病院で保護されていた」「身近な人が里親を探していた」という巡り合わせがあれば、ひとまず単騎でも、どんな猫でもお迎えしたい気持ちだったんですが、こういう譲渡サイトを使って自分たちで探すのであれば、この先20年一緒に暮らすわけなので、なるべく妥協せずに探そうと決めていました。
というか条件を絞らないと探しようがないくらい、たくさん里親募集の猫がいたので、そういう感じに検索を始めました。
条件については、こういう按配で決めました。
【1】自力でお迎えにいける距離
単純に移送で猫が疲れるのを避けるためと、猫に限らず「自分の手の届く範囲」で行動するのが信条だからです。
これについては、多分そのうち詳しく書きます。
【2】サビ猫
何しろケイティが世界一かわいかったので、選ぶ余地があるとすれば絶対にサビです。
猫と暮らしたいというよりはサビと暮らしたいというのが九割の気持ちでした。
ほら世界一かわいい
【3】メス
実は、私は猫が怖い…ので、基本的に温和で飼いやすい和猫のメスがいいなと思っていました。
ちなみにサビ猫っていうのは三毛猫の一種なので、ほとんどがメス猫です。
【4】きょうだい2匹
「きょうだい」がいいのは、相性の心配がそれほどなく多頭飼いできるからと思っていただけなので、たとえば「同じ場所で保護されていて仲よしだから、できれば2匹一緒に」、というのでも大歓迎でした。
※兄妹・姉弟や仲のいい猫同士なら、片方がオスでも酷いケンカになったりはしないだろうから、【3】のメスは「片方メスならOK」になります。
【5】避妊手術前の仔猫
仔猫がいいのは、まだ小さい頃から育てても20年後に看取る体力が我々に残されているからで、だったらできるだけ長く一緒にいたいからです。
ふたりとも在宅なので、留守番できる大きさになるまで仔猫を見守る時間もある。
もっと年老いて、猫より自分たちの寿命の方が心配になったら、成猫とか、老猫を引き取るのもいいねと話しています。
あれこれ検索しながら譲渡サイトを眺めるうち、これらがとてつもなく贅沢な条件だということを、とても早い段階で思い知りました。
「サビ一匹」というだけなら割といます。
なぜならサビは、一部のマニア以外に…人気がない…。
たとえば5匹兄弟で1匹がサビだった場合、大体サビが余ります。
(しかしマニアは確実にいて、サビ猫が出た瞬間に譲渡が決まるのも何度か見た。気立てがよくて飼いやすいから、最近ちょっと人気みたいですか?)
余りがちなサビですが、ただ、「きょうだい2匹でお迎え可」かつ「仔猫」になると、途端に候補から消える。
まれに、かなり希望に近い猫が出てくる時もあったんですが、そのすべてに「結婚前の同棲カップル・友人同士の同居不可」という文字がありました。
求める猫がこちらの条件にピッタリ合ったとしても、保護している側から見てれば、我々は里親としては失格です。
先日の記事にも書きましたが、譲渡サイトで譲り先を探している人たちの多くが、愛護団体です。もしくは、個人的に保護活動をしている人たち。
彼らは実に効率的に「不適格な里親希望者」を弾きます。
「同棲カップル・ルームシェアの方は申し込みをご遠慮ください」と真っ赤な太字で書かれているのを見て心が砕かれます。
未婚カップルや友人同士の同居の場合、いざ結婚が決まった場合、子供ができた場合、ケンカ別れした際などに、猫を捨てる例があるからだそうです。
捨てるわけがない、同居解消することがあっても、親権争いが始まるだけだ…! と私たち自身ははっきり断言できますが、相手にしてみれば、何の保証もないのです。
「収入証明や勤め先の証明を提出してください」というのもあった。
勤め先の証明ってどうしたらいいんだ、出版社から源泉徴収票とか取り寄せればいいの?
しかしこれぞという猫を保護している団体の説明文には、「問い合わせも一切ご遠慮ください」と書いてあったりもする。
信じてほしいけど、どうして疑われなきゃいけないんだろうと思うけど、結婚してようが離婚することだってあるし正社員でもリストラされることだってあるじゃんと言いたくなるけど、でも愛護団体の人たちが厳しく条件を設定しているということは、実際にそういう形で捨てられた猫がたくさんいるということだから、仕方がない。無責任な人たちを恨むことしかできない。
猫を探す中で、世の中にどれほど里親詐欺などが横行しているかを具体的に知り、腸千切れそうなくらい怒り狂ったりもしました。
おまえらのおまえらのおまえらのおまえらのせいで…おまえら…。
愛護団体の人たちが攻撃力高めるのも無理はない。そうしないと猫を守れないんだから。
それでも中には、「猫の危険を減らすために条件は提示しますが、もし条件に合わなくても相談に乗りますので、とりあえず連絡してください」という団体もみかけたんですが、そこにサビはいない。
諦めきれずに近所の動物病院や行ける範囲の譲渡会(地元以外)も合わせてチェックするけれど、「ルームシェアの家に譲ってもらえる、2匹でお迎え可能なサビの仔猫」は、まったく見つからない。
本当に、数年前まで近所でさび猫の小さいのがゴロゴロいるのを目の当たりにしていたので、市内は無理でも、都内近郊にはきっとさびを持て余している人がいるだろうと、何となく思っていたのですが…。
サビ猫以前に、我々のような社会的地位のないルームシェア生活の人間などは、猫を迎えること自体が難しい。
譲渡サイトにおいてもそれをひしひし感じ、「探すために条件はつけるけど、何より猫が家にいることが重要なので、ゆずれるところはゆずろう」ということを、式部さんと決めました。
暗くなってきたので世界一かわいいサビ猫の写真を挟みます。
そしてこの辺りで、同じサイトを使って猫をお迎えしたという女性一人暮しの編集さんから智慧を授けられ、「個人の保護主が出している記事を探すとよい」ということを知る。
それより先は、第一に「個人の保護主である」という条件から探すようになりました。
「個人の保護主>2匹一緒に>片方はメス>できれば片方だけでもサビ」という優先順位のもとに、ご縁があれば、両方サビ以外の柄でも申し込もう。
と改めて決めた矢先に、出ました。
サビではないけれど「きょうだい」「仔猫」という条件の合った、かなりゆるやかな条件を出している個人の方の募集が!
こ、これは…! と思って、ひとまず問い合わせのメッセージを書くことにする。
しかし、メッセージを書いている間に、あっという間に、5匹いた猫は全部譲渡成立していました…。
そうですよね!
みんな厳しい団体は避けて(あるいは断られて)、柔軟に対応してくれる個人の保護主さんを求めているんだよね!
いやあ、それにしたって、募集記事が出てわずか数時間でしたよ…。
この辺りで、わたしも式部さんも以前にも増してどうしようもなくナーバスになり、正直に言いますが、「最終的にペットショップで買おう」ということで合意していました。
ペットショップがどれだけ悪く言われているかは知っています。抵抗ある人がいるのもわかっているので、きっとこれを見てすでにお怒りの向きもあるかとは思います。
が、でもそうでもしないと、猫と暮らせない人もいるのだということをわかってくれ…。
前に男性のユーチューバーの人? が、ペットショップで猫を買って、叩かれるのを見ましたが。
でもあれ、もしうちの地元と似たような場所に住んでたら、「男性・一人暮し・フリーランス(全部推定ですが)」なんて条件で、愛護団体は猫を譲ってくれないもの…。
奇蹟的に自力で拾うんじゃなければ、買う以外に猫と暮らす手段がないんだもの。
闇雲になじっている人は、ちょっとそういう現実を知ってくれよと、全然知らない赤の他人なのに、肩入れしてひそかに憤っていました。
愛護センターや保護カフェに行ったって、猫を譲ってもらえない人間もいるんですよ。
応募すること自体が「非常識」だと声高に責められる立場の人間もいるんですよ。わかってくれ。
(※実際のとこそのユーチューバーの人がどういう環境でどういうつもりで猫を買ったかはわからないんですが。でも、単純に愛護センターに行けば誰でもかならず譲ってもらえるってもんでもないことは、わかってほしい。本当に。口汚い罵りの言葉を浴びせる前に)
幸い近所のペットショップは、かなり環境のいい店で、愛護活動に売り上げの一部を寄付していて、愛護団体から「決して方針は相容れないけど、頑張ってるのは認めてあげましょう」という謎の表彰状をもらっているところです。
そこを最後の砦と決めて、少し心の安寧を取り戻す。
なので、ペットショップにもしょっちゅう通ってました。
しかし、ペットショップもあちこちから色々言われてるのか、全然違う理由からか、空前の猫ブームであるはずなのに以前より扱う生体の数が減り、中でも猫が激減していました。
可愛い仔猫が「あたらしい仲間です」とシールの貼られたケージに出現し、数日後に覗いた時には「おうちがきまりました」シールに変わっている…。
多分みんなも私たちと同じ流れでペットショップに希望を繋いでいるのではないか? と邪推するくらい、どんどん入れ替わる。
かわいいアメショやラグドールやサバンナがケージから消えていくのを臍をかんで見守りつつ、毎日譲渡サイトのチェックをしては落ち込む。
その間に、遠方での「近所の畑に仔猫がいる」「ガレージで仔猫をみつけた」というツイートや世間話を耳にして、歯軋りしていました。
うらやましいと言ってしまってはいけないのだろうけど!
野良猫が増えることの弊害も、それを減らすために尽力している人たちの苦労も聞いているけれど!
でも正直うらやましい…○○さんちの納戸で仔猫が産まれたんだって、へー、じゃあうちで一匹もらうか、みたいな流れで猫が手に入る環境が泣けるほどうらやましい!
ちょうどフォロワーさんが、近所の張り紙でさび猫の貰い手を探しているのをみかけて譲ってもらうことにした、と呟いたりもしていて、腸が引きちぎられそうなほど妬ましかった…。
世の中には、貰い手がみつからずに苦労している動物がたくさんいるというのに。
どうして、どうしてこんなにも猫を熱望している我々の元に、さび猫は訪れないのか。
友人同士の同居というだけで、なぜ「問い合わせすら非常識・迷惑」などと言われなくてはならないのか。
※これ言ってるのは一部の団体だけで、今思い返すと全部が全部そう決めつけているわけではまったくなかったんですが、当時は「同居不可」の文字を見るだけでアホみたいに落ち込んでいた。
もういっそ、新幹線で行ける距離なら、Twitterで里親募集している人に問い合わせてみるか…と思ってそういうツイートをジリジリ眺めていると、どこからか親切な人たちがたくさん現れて、「Twitterで里親を探すなんてとんでもない、譲渡サイトを使ってください」とリプライし、募集ツイートは謝罪と共に削除される、という流れを何度も目にする。
そうだな、きっとそれが、安全で正しいやり方なんだろうな…。
そんなこんなの毎日を鬱々とした気分で過ごしていたのですが。
出ました。
出たわけです、サビの姉妹が。
譲渡サイトの新着に現れた「可愛いサビの姉妹です」というタイトル文字を見て、素で悲鳴を上げました。
愛護団体ではなく、個人の譲渡希望者でした。
また長くなったので続きます。
狂おしくかわいいサビ猫です。
つづき