「恋した王子に義母上と呼ばれています」裏話

あとがきにも書いたのですが、体調を崩して救急搬送からの半月入院になってしまって、雑誌掲載時に前後篇に分かれちゃったやつです。

“国王の世継ぎ”を産むため、突然異世界に召還された恵那。もちろん産みたくなどないが、魔法で縛られ逃げることもできない。“恵那王妃”と祭り上げられ国中が祝福ムードの中、ひとり剣呑な眼差しを向けてくる男がいた。アヴェルス――王の一人息子ながら継承権を持たない王子。彼に用心しろと周囲には言われるものの、恵那の境遇に同情を示してくれたのは彼だけだった。人目を避けた逢瀬を重ねるごとに不器用な優しさに惹かれていく恵那だが、実は男性であると言い出せず……? こじらせ王子と見せかけ王妃の異世界トリップ・ロマンス!!

イラスト:もちゃろ

電子書籍が今月15日に配信予定なのでよろしくお願いします。

前篇が、狩りに連れ出された恵那がアヴェルスに対する自分の気持ちに気づく――というところで切らざるを得ず、もうちょっと書いてはいたんですが切りがいいのがそこしかなくて、あとちょっとで! あとちょっとで書き終わるのに全部載せられなくて悔しい…!!
みたいにベッドで悶えてたんですが、後篇書いてみたら「なんであとちょっとって思ったんだ…?」って首を捻ったっていうね。

もともと何を書いても長くなりがちなんですが、まあ後篇だけ短くても雑誌買ってくれた人が味気ない思いをするかもしれんなあという気持ちもあった(ような気がする)ので、いつもだったら端折ってそうなところも端折らず書いた。ような…?

すみませんアウトプットすると脳内メモリから削除されることが多くて定かではない。でもそんな朧気な記憶がある。

入院してる間も、退院できたけど家で椅子に座っているのもままならぬ間も、精神的にものすごくキツかったなあという思い出の一冊です…。
このまま何も書けない人になって死にゆくばかりなのだろうかと悲観的になりそして不眠症にもなった。自分で自分を追い詰めてどうする。
今全然元気で「そんな思い詰めんでも」と他人事のように思っています、本当におまえは喉元を過ぎたら全部忘れるなあ。

ファンタジーがもともと好きで、BLでも書けるのはやっぱりすごく嬉しいですね。
ともすれば世界観を書きすぎてしまうので、BLではなるべく受け攻め二人の気持ちを中心に書くようにしなくちゃと思うんですが、でもファンタジーならではの楽しさを削ってしまったらその設定で書く意味があるのか…? というところでかなり悩ましいです。
BLじゃないファンタジー作品でも、世界観の説明や描写などいらないから全部削といわれて150ページくらい没になったことがあったなあ。
私はやっぱりどういう背景で人が出会ってどう交流して何を決断したか、っていうエモに繋がる部分だから大事に書きたいんだけど、「読者さんはそういうの求めてませんから」と言われると…どうなんですかね、難しいな。
めいっぱいネチネチ世界観から書くファンタジーはまあ趣味でやりなさいよとは思うので、そういう部分で同人誌とかweb小説やりたいなでもあります。
でも出版社によって「恋愛よりもしっかり設定を書いてください」っていうところもあるので、読者さんの求めることというよりはレーベルの求めるものなんだろうなという気は正直している。ていうか担当編集者個人の好みなんだろうなと。

「BLなんだから恋愛を中心にしなさい」も「ファンタジーなんだから設定をちゃんと書きなさい」もどっちもわかるので、うまいバランスを探っていくしかないですね。これはもう商業で書き始めてから永遠に迷い続けているところなので、仕事として書く上ではずっと悩み続けるんだろうなあ。
単純にうまく書けてないから「いらない」と言われている可能性も高いので、その辺ももうちょっと頑張らねばとも思っております。

雑誌の前篇の時、読者さんのご感想で「アヴェルスは恵那が男だと気づいているのか?」「女だと思ってるんだよね?」っていう疑問が結構あったので、前後篇に分かれちゃったのが本当に申し訳ないような、でもむしろ分かれたがためにそこを楽しめてもらえたか? と、読んでくれた人にしかわかりませんが。
答えとしてはそれこそアヴェルスと恵那の初対面シーンで出ているので、気づいてた人もいるのかな。
いろんな楽しみ方をしてもらえてたら嬉しいです。

続篇は私の体調が大丈夫なら、本当に早めに出したいなあという感じの流れでございます。
私は書き上げて満足だったので、後篇部分で終わっても別によかったんですが、読者さんからは「物足りない」「尻切れトンボ」と言われまくったので、書きたいところと読みたいところが相変わらず噛み合ってねぇなすみません、という気持ち。
そんな感じなので、続篇を書いたからと言って満足してもらえるかは怪しいですが、何にせよ続きを書かせてもらえるのは嬉しいです。
多分子世代辺というよりは、純粋に「続き」になると思います。恵那が主役のままということです。多分ここは外してないよね、みんなが読みたいのはそっちですよね…!?

今どうしようかなと迷っているのは地の文で恵那をどう表記するかですよ。
エナはいなくなり、恵那と呼ぶ人もいない世で、でも地の文での呼び方が変わるのが自分としては違和感があり…。
恵那っていう響きと字面から与えられる印象と、悠一郎とかユウっていうそれらから与えられる印象は全然違うし(私の中で)。
恵那にするか悠一郎にするかで迷っている。
続きが出たら、「あ、こっちにしたのね」って思ってください。